■スープラの存在意義は売れ行き以上に大きい
いっぽう、そういったソロバン勘定を抜きに考えても、トヨタにとってスープラの存在意義は大きい。
2002年に80スープラの生産が終了して以降、トヨタ車のラインナップからスポーツカーといえる車種が一時消滅する。それを嘆いた豊田章男社長のキモ煎りで、86/BRZプロジェクトがスタートしたのはよく知られている。
いくら生産規模が大きくなっても、クルマ好きのハートを揺さぶるような魅力のあるクルマを造れなければ、自動車メーカーとしてリスペクトされない。86/BRZ、90スープラ、GRヤリスと続くトヨタのスポーツカーラインナップは、数は少なくとも重要なブランドアイデンティティを担っている。
これは、トヨタだけの問題ではなく、たとえば日産にとってGT-R、マツダにとってロードスター、ホンダにとってNSXが、もし存在しなかったと仮定したらどうだろう?
ブランドの認知度・高感度を高め、クルマ好きの選択肢を豊かに彩るという意味で、スポーツカーの存在は他では得難い魅力があるのだ。
細かいことを言えば、エンジンからシャシーまでトヨタの技術で完結して欲しかったとか、さらにモータースポーツでも実績を残して欲しいとか、そりゃ注文をつけたい点は少なからずある。
■トヨタブランドに与える絶大なグッドイメージ
90スープラRZの現行モデルは、3L直6エンジンの出力が387psまで高められ、ほぼ素のポルシェ911に匹敵するハイパフォーマンスカー。
特徴的な2470mmというショートホイールベースも911なみに攻めたディメンションで、たとえばGT3仕様なんかを仕立ててニュル24時間あたりで総合優勝を狙ってもおかしくないくらいのポテンシャルを持っている。
本来なら、そのくらいのことをやってくれたら嬉しいのだが、トヨタの中のモータースポーツプログラムはWECやWRC優先。国内ではスーパーGTでそのシルエットが活躍しているものの、もうちょっとスポーツイメージを牽引するような華やかな活動があったらなぁ、と望まれる。
まぁ、そんな贅沢な望みが持てるのも、ベースとなるスープラというクルマの存在があってこそ。
何度も言うとおり、スポーツカーは存在そのものに意義があり、とにかく「細く長く造り続けること」で、ブランドイメージの向上に貢献することが重要。
年間売上27兆円というトヨタにとって、スープラの売上はざっと見積もって0.2%程度に過ぎないが、その存在がトヨタというブランドに与える影響度は、たぶん100倍では効かないんじゃないかと思うなぁ。
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