■ハイブリッド技術は国産車が世界一
現状、ドイツ車が国産車に全く太刀打ちできていないのが、ハイブリッド技術だ(主にトヨタのことだが)。
THS(トヨタハイブリッドシステム)は、遊星歯車を用いた動力分割機構を備え、発電用モーターと駆動用モーターのふたつを制御し、エンジンのエネルギーを、駆動や充電に振り分ける。
リダクション機構付きとなったTHS IIでは、リダクションギヤのプラネタリーギヤを平行軸歯車に変更し、モーターを複軸配置する「新複軸構造トランスアクスル」を採用している。
レスポンスが良く、ダイレクトな加速感が得られる点や、高速走行中でも、エンジン休止することで燃費向上も実現、変幻自在に多くの車種へと展開できる間口の広さ、大量生産によるコスト低減、壊れにくいという実績、皆が乗っているという信頼性、こうした点はTHS IIの大きな魅力だ。
THS IIはまた、これといって不得意な面がないのも魅力だ。
ダイナミックフォースエンジンの出力や燃費、音振、フィーリングなどに不満はなく(重箱の隅をつつけば、加速時のエンジンサウンドなど物足りない点もあるが)、指摘できるネガティブポイントはない。今後も細かな改良が続くと思われるが、THS IIは「ひとつの技術の完成形」と言ってよいのではないだろうか。
このTHS IIが採用されている高額車、といえばレクサスIS300hやトヨタ・クラウンハイブリッドだ。2.5リッター直列4気筒ガソリンエンジンに、このTHS IIを組み合わせている。
滑らかで強い加速フィーリングに加え、WLTCモード燃費も20.0km/L(市街地17.2、郊外20.8、高速20.9)を達成。今後ますます重要視されていくCO2排出量は116g/km((WLTCモード値、JC08モードだと97g/km)と優秀で、しかもレギュラーガソリン仕様だ。
これほど高効率、かつ環境性能も優秀なパワートレインは、ドイツ車には存在していない。ちなみにIS300hは1690kg(2WD)、クラウンハイブリッドは1730kg(2WD)だ。
またホンダ・アコードに搭載されているe:HEV(2.0リッター直4ガソリンエンジン+電動機)も、WLTCモードで燃費22.8km/Lを達成する。しかも、FFのアコードe:HEVの車両重量は1560kgと軽量だ。
■ドイツ車は、マイルドハイブリッドで乗り切ろうとしている
ドイツ車勢はというと、現時点は、48Vマイルドハイブリッド、プラグインハイブリッド、ディーゼルエンジン(このところアピールはだいぶ控えめになってきたが)で今を乗り切り、その先では、プラグインハイブリッドとBEVで戦おうとしている。
だが、48Vマイルドハイブリッドは、所詮、エンジンのアシストと、電力回生が主目的で、モーターでの自立走行は出来ない。また、発進時のドライバビリティには優れるが、燃費貢献への効果は小さい。
例えば、BSG(Belt-driven Starter Generator:メルセデスベンツのマイルドハイブリッドシステム)有のメルセデスC200の場合、BSG無のC180 を比較したとき、WLTCモード燃費の上では、12.7km/Lが13.6km/Lへと約7%の改善代に留まる。
ストロングハイブリッドのレクサスIS 300hの燃費18.0km/Lには、遠く及ばない。
プラグインハイブリッドに関しては、例えばBMW330eの場合、EV走行距離58km(WLTCモード)のボーナスがあるにせよ、330iの1630kgに対し、330eは1810kgと、約180kgもメタボ化している。
切れ味鋭いハンドリングセダンと言われる3シリーズが、これほどの重量増加とは、魅力を大きくスポイルしかねない。
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