■欧州、日本とも丁度いいサイズに高い信頼性の組み合わせで、大人気になった
なぜゴルフがここまで日本だけではなく、欧州をはじめヨーロッパなどで人気になったのか。その理由は、まずセグメントのよさにある。
ゴルフがデビューした当時、ヨーロッパの自動車メーカーのカタログを見てみると、2ボックス+リアゲート付のクルマというのがほとんど見当たらない。わずかにルノー、フィアット、フォードにそういうモデルが存在したぐらいだった。
しかし、世の中の若い世代は、セダンタイプでは、荷物が積めない。FR車では室内が狭い。安価なクルマは信頼性に欠ける、などの不満を持っていた。
そこに、FF、2ボックスのゴルフが登場した。信頼性に関しても、もともとゴルフの設計と開発コンセプトは、ビートルに代わる安価で、量産、量販できるモデルということだった。
そのために、エンジンはVW社が1964年に傘下に入れたアウディ(当時はアウディUSUアウトウニオン)のものを用い、そのほかをビートル開発の経験があるVWが受け持った。このクルマづくりの手法が、いまのVW=ゴルフにもあてはまり、信頼性にもつながっている。
初代ゴルフは、すでに量産されていたアウディとビートルの技術を生かして生産された。この手法こそ、ゴルフが信頼性において、世界のユーザーに認知された理由だ。
つまり、ゴルフはこれまでに、多くの新技術を実用化してきたが、その技術は大半が、まず系列のクルマに搭載し、信頼性があると判断してから、本家にも使用する、という手法だ。
VW社は、アウディグループだけでなく、チェコのスコダ、スペインのセアトなど欧州ではそれなりに人気車を生産する子会社が存在する。それらの子会社の新型を開発・生産・販売するにあたり、VWの新技術などを導入する。そこである程度熟成させたものを新型ゴルフに投入するのだ。
当然、初期トラブルは子会社のクルマで発生するが、スコダもセアトも、小型の安価なクルマがメインなので、ユーザーも多少の不具合は許してくれるという環境が幸いしたのだ。
こうしてゴルフは欧州でもベストセラーの地位を長年、キープしてきた。
■日本市場への初輸入は1975年。瞬く間に輸入車のメジャーに成長した
一方、日本に目を移すと、初代ゴルフが輸入された1975年の、JAIAが主催する外車ショーでの「外国車ガイドブック」を見てみると、状況は欧州と変わらない。
ゴルフクラスのクルマは、トライアンフ、オースチン、モーリス、フォード、オペル、ルノー、シトロエン、フィアット、アルファロメオなどが出品していたが、いずれもトランクが独立した3ボックスが多く、ライバルは不在といってもよいほど。
しかも、ゴルフを扱うディーラーは、ヤナセだった。当時、アメリカ車から欧州まで7ブランドを販売していたヤナセの販売力は輸入車業界でトップ。ゴルフはたちまち、輸入車ファンの間で、話題のクルマになった。
■現在はゴルフ以外にもポロやT-CROSSといったニーズの多様化が進んだ
しかし絶対王者の存在だったゴルフがなぜ、現在は登録台数でBMWミニの後塵を拝しているのか。
先代ゴルフ(ゴルフVII)がデビューしたのは2013年。もちろん2013年、2014年、2015年はゴルフが登録台数で1位だった。デビュー4年目ともなると、新車効果は薄れてくる。
2位のBMWミニは、ミニシリーズに加えてクロスオーバーシリーズなど多彩な車種で販売台数を伸ばしてくる。本来ならVWのセールスもゴルフを売って、1位をキープしたいと、販売に力が入るハズなのだが、7代目ゴルフデビューと同時期あたりから、ポロが順調に登録台数を伸ばしはじめたのだ。
2014年4位、2015年5位、2016年5位とベスト5の一角にポロが食いこんできた。VWのセールスにすれば、すでにメルセデスやBMWがコンパクトクラスを投入し、競争が激しくなったゴルフだけに集中しなくても、ポロがある。
さらに昨年は、SUVのT-Crossが4位に躍進してきたのだ。ちなみにポロも7位に入っている。
これだけVWのクルマが売れていれば、モデル末期のゴルフに力が入らなかったのも当然。しかし、ゴルフが新型になった。
新型はエンジンを1Lと1.5Lのマイルドハイブリッドにし、巻き返しを図っている。とくに1Lモデルはバランスもとれており、ベストゴルフともいえる出来栄えだ。車両本体価格も291万6000円~と、エントリーグレードは300万円を切る設定になっている。
再びゴルフ(メキシコ湾から押し寄せる暖流の意)のように、日本市場に熱い流れがやってくるのだろうか。
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