■幾多の改良と専用車への回帰
1985年、2代目クイックデリバリーが登場する。従来までの積載量1.25tに加えて、積載量2tのダイナクイックデリバリー・トヨエースクイックデリバリーが追加された。
1995年にはマイナーチェンジをおこない、ハイエースクイックデリバリーはクイックデリバリー100、ダイナ・トヨエースクイックデリバリーは、クイックデリバリー200へと改称される。
2000年、クイックデリバリー100が生産終了となり、クイックデリバリー200だけが3代目へ進化を遂げる。カクカクした初代・2代目から、丸みを帯びたルーフに変更された3代目は、柔らかさを感じられるデザインとなった。
同じく2000年に、クイックデリバリーは一般販売を終了する。初代の初期と同じように、またヤマト運輸専用モデルとして生産されることとなった。
■なぜ絶版に? 宅配業界の変革とクイックデリバリーの消滅
クイックデリバリーの魅力は、ウォークスルーバンの機能性にあった。しかし、宅配業界の変革により、ウォークスルーバンが宅配の形に合わなくなってきてしまう。その一因が1988年に登場し、1993年には冷蔵・冷凍の2温度帯で配送を請け負うこととなった「クール宅急便」だ。
クイックデリバリーでもクール便仕様は存在する。荷室の右半分が冷蔵庫・冷凍庫となり、上部のフタが開閉して荷物を出し入れする構造だ。そのため、フタの上に、一般の荷物を置くことはできない。さらに、冷蔵庫とウォークスルースペースを確保すると、一般の荷物がほとんど詰めないクルマになってしまうのだ。
さらに、2000年代前半から、ネット通販が増え、大型宅配便の需要が高まった。トラックと比べると、クイックデリバリーは、大型荷物の運搬を苦手としている。
そして最近では集配アシストと呼ばれる仕組みが増えた。配達地域の近くまで大型トラックで荷物を運び、大通りや広い場所で、大型トラックから各集配アシストへ荷物を渡す。荷物を受け取ったアシスト担当者が、小型のバン等で各家庭まで荷物を届けるというシステムだ。
これで、クイックデリバリーの持っていた、狭い小道を苦にしないという利点が目立たなくなってしまった。
こういった新しい宅配便の仕組みや、システムの構築により、クイックデリバリーの需要は次第に下がっていく。そして2016年、生産中止が告げられてしまうのだ。
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ユーザーの注文から生まれたクイックデリバリーは、真にユーザー目線で作られたクルマである。このようなクルマが生産を打ち切られてしまうのは、本当に惜しいことだと筆者は思う。クイックデリバリーは次世代に残しておきたいクルマのひとつだった。
現在、クロネコヤマト専用車として生まれたクイックデリバリーは、一旦の役目を終え、次のライフステージに移行しようとしているはずだ。
近年では、キャンピングカーのベース車両として人気が高まっている。クイックデリバリーは、キャンピングカーやキッチンカーとして、元気な姿を見せてくれるはずだ。私たちの生活に密着したクイックデリバリーというクルマを、覚えていてほしい。
【画像ギャラリー】キッチンカーやキャンピングカーのベース車両として人気上昇中!! 第2のライフステージに向かうクイックデリバリー
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