国交省が本気で検討中! 高速道の変動料金制が導入されるとどうなる?

■導入が検討されているのは渋滞が慢性化している大都市圏のみ     

 では具体的に、どのような料金になるのか。

 これが導入されるのは、渋滞が発生する大都市圏に限られる。地方の高速道路では渋滞はほぼ存在しないので、戦略的な料金体系を導入する意味はない。大都市圏では、時間帯や曜日を区切り、混雑状況に応じて機動的に料金を変えることを想定している。

 具体的な区間や時間帯、金額は今後検討して行くことになるが、たとえば週末の中央道(小仏トンネル付近)や、東京湾アクアラインなど、激しい渋滞が発生する区間で、2022年度以降、試行する案が有力視されている。その後、平日ラッシュ時の首都高や外環道等にも導入が広がるだろう。

現在導入を検討中とされる東京湾アクアライン。本来は京浜・京葉地区のバイパス道路だが、観光地化した「海ほたるPA」で週末渋滞が慢性化。料金割増による効果は?(AdobeStock@dreamnikon)
現在導入を検討中とされる東京湾アクアライン。本来は京浜・京葉地区のバイパス道路だが、観光地化した「海ほたるPA」で週末渋滞が慢性化。料金割増による効果は?(AdobeStock@dreamnikon)

 それがどの程度効果を発揮するかは、実施日および時間帯や、料金の上乗せ額によって決まってくる。

 料金で1割程度の上乗せでは、効果はゼロに近い。ではどれくらいが適当かと言うと、一概には言えないが、5割増しならそれなりの効果はあり、2倍なら効果大だろう。

 オリンピック期間中の首都高1000円上乗せは、絶大な効果を発揮した。首都高の交通量は、期間中、2割から3割も減少し、渋滞も激減した。

なにしろ1000円上乗せと言えば、平均して約2.5倍もの大幅な値上げだ。加えて、東京都が行った運送業者や大企業への交通量削減要請も大きな効果があり、一般道の渋滞すら例年より微減となった。

 つまり、オリンピック期間中の交通需要マネジメントは、「無観客なのにやりすぎだ!」との印象があったにせよ、東京都の完全勝利に終わった(首都高1000円上乗せや高速道路の車線規制や料金所ブース規制を主導したのは、オリンピックを主催した東京都で、首都高やNEXCOではないので念のため)。

■割増による労働条件への影響や一般道の利用状況との兼ね合いも考慮し検討中

 しかしこれは、あくまで半世紀に一度の短期の実施だから可能だったのであって、恒久的に行うには、上乗せ幅が大きすぎる。オリンピック期間中は、一般道を含めた交通量全体を減らす要請が行われたからこそ成功したが、普段はそうは行かない。

 中央道やアクアラインは、迂回路がないに等しいため、それなりに思い切った割増も可能だが、首都高の料金を上げすぎれば、一般道へのしわ寄せが大きくなる。プロドライバーの労働条件悪化を防ぐ配慮も必要で、具合案作りには、非常に繊細な検討が必要だ。

これまでの料金見直しは高速道路の利用を促す割引だった。しかし渋滞を引き起こす要因であり、今後は一般道も含めた交通量の最適化を図る狙いへと変化し始めた(AdobeStock@moonrise)
これまでの料金見直しは高速道路の利用を促す割引だった。しかし渋滞を引き起こす要因であり、今後は一般道も含めた交通量の最適化を図る狙いへと変化し始めた(AdobeStock@moonrise)

 今回の中間答申では、「高速道路と一般道路が一体的に複雑なネットワークを構成する大都市圏の料金体系の評価等においては、高速道路の利用のみならず、一般道路の利用を含めた交通の状況について分析する必要がある」として、ビッグデータを活用するとしているが、そのうえで、利用者にわかりやすいものにする必要があるのだから難しい。

 ETCは後払いだけに、その場での支払いの痛みがなく、高速道路の入口に来てから「この時間は高かったのか!」と気づいても、そのまま利用する確率が高いからだ。

 個人的には、オリンピック期間中の首都高1000円上乗せに関して、「一般道へのしわ寄せが大きすぎる」として反対してきたが、フタを開けてみれば大成功だったことを考えると、今後実施される「戦略的な料金体系」も、しっかりしたシミュレーションに基づくはずで、大いに期待が持てると考えている。

次ページは : ■料金体系の変更で利用する道路の選択肢が拡大し、混雑の平準化メリットも

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