全国で記録的な大雨が続いています。災害の季節がやってきました。もし事故や水没などで車内に閉じ込められたとき、焦っているとシートベルトを外せないことがあります。バックルが壊れて外れなくなるケースもあるかもしれません。
そんなときに必要となっているのが、シートベルトカッターと「知識」。シートベルトは簡単には切れません。いざというときのために、「シートベルトは斜めに切る」。これだけは覚えておいてください。
文/照井資規(元陸上自衛隊衛生官)
写真/照井資規、AdobeStock、ベストカー編集部(アイキャッチ写真:Adobe Stock@paylessimages)
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■シートベルトが緊急脱出を妨害するケース
シートベルトは乗員保護具であると同時に乗員の拘束具になり脱出を妨げる2面性がある。筆者が東日本大震災での災害救援活動時に目にしたものは、シートベルトを外すことが出来ずに自動車内で焼死した多くの被災者のご遺体であった。
シートベルトは交通事故時の乗員保護において極めて重要である。シートベルトを正しく装着しているか否かで、生存率に最大56.5倍もの(国土交通省統計:平成26年度)差が生じる。特に運転席は胸部正面にあるハンドルが最大の凶器になるため致死率が際だって高い。このためエアバッグにより頭部、胸部への衝撃を緩和する必要があるのだ。
しかし、シートベルトは衝突により乗員を保護した後に、バックルなどが衝撃により変形してしまい外れなくなってしまうことがある。こうなるとシートベルトが乗員拘束具となってしまい脱出できずに水没や焼死してしまうおそれがある。このため、シートベルトの切断方法について精通し、必要な道具を備えなければならない。
図1「自動車のシートベルトの構造」にあるように、シートベルトは乗員の背中側から送り出され、固定されているのは、唯一、終点の金具の位置のみである。シートベルトを素早く切断するには、この構造を知っておく必要がある。
シートベルトの素材としては、引き出しやすいように滑りがよく、乗員保護のため自動車の衝突時に乗員の頭や胸が車体に衝突したり、乗員が車外に飛び出さぬように保護できるよう、衝撃に耐えうる丈夫なもので製造されている。容易に切れてしまっては役に立たないからだ。
しかし、シートベルトのバックル結合を解除できなくなってしまうと、脱出できない「拘束具」となってしまうおそれがある。そのため、シートベルトは真横には切れにくいが斜めには容易に切断できるように編まれていることを知り、シートベルトを切断できる専用のハサミやカッターなどのレスキューツールを必ず手の届く場所に備えておくべきなのだ。
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