■シートベルトの切断方法
素早くシートベルトを切断できるのはカッターであるが、切断時にシートベルトを緊張させ、斜めに切ることを熟知していなければ切断することは困難である。事故時の混乱時に思い出せないおそれもある。
通常のハサミではシートベルトに対し刃が滑ってしまい切断は困難であるため、細かい鋸刃を備えた専用のハサミが必要となるが、シートベルトのどの位置でも緊張させる必要なく確実に切断できる。混乱していても失敗するおそれがない。しかし、カッターよりも切断に時間を要する。
図2「自動車のシートベルトの切断方法」のとおり、3点式シートベルトの場合、ベルトの肩から腰にかけての部分はカッターを引っ掛けた際にシートベルトが引き出されて緩んでしまい、切断することが難しい。シートベルトの骨盤を巻く部分をベルトが固定されるように固定金具と反対側にバックル側へと強く引き緊張させる必要がある。
図3「シートベルト裁断器具の使用方法」のとおり、カッターで切断する場合は、刃をシートベルトに対し斜めに立てると容易に素早く切断することができる。真横では切断することが非常に難しいため、切れないと感じた場合は落ち着いて切断方向について思い出すことだ。カッターによるシートベルトの切断は咄嗟の時にできるように一度は体験しておくことが望ましい。
シートベルトを切断できる専用の鋏は相当に高価であるが、これなら誰でも間違いなくシートベルトを切断できる。通常の鋏ではシートベルトを切る時、刃が滑ってしまい難しい。鋏で切断する場合は時間がかかるため、シートベルトを斜めに切るよりも最少の時間で切断できるように、最短距離である真横に切る。
筆者:照井資規
東日本大震災(2011年3月11日)発災時、陸上自衛隊の医療職の幹部である「衛生官」であり、岩手駐屯地、第9戦車大隊の医療部隊の隊長である衛生小隊長であったため、発災直後に出動した災害派遣時にて津波災害に被災した自動車の様相を数多く目にした。その翌年、ITLS (International Trauma Life Support) 国際標準外傷救護初療教育プログラムAccess (交通事故救出救助研修)インストラクターとなる。本記事はその内容に準拠している。
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