かつての超名門シーマ いまは見向きもされず…どうしてこうなった?

シーマの凋落は、北米で売れたことで始まった

 シーマは、初代のFPY31(1988年~)から始まり、FY32(1991年~)、FY33(1996年~)、F50(2001年~)、そして現行モデルHGY51(2012年~)へと、4度のモデルチェンジを受け、5世代に渡って続いてきた。だがその人気度は代を追うごとに徐々に下降し、冒頭で触れたように、現行モデルは、直近の月間販売台数が、一桁もしくは多くても10台程度、というところまで落ちてしまっている。

 シーマは、3代目以降、北米インフィニティのフラッグシップとしても売られてきた。これをきっかけに、日本では人気が低下してきたことも重なり、徐々にアメリカ人好みへと変化し始める。車幅はますます拡大し、デザインもアメリカ人好みの派手顔になるなど、国内市場が二の次になっていってしまったのだ。特に4代目のF50シーマは、全長4995mm、全幅1850mmという、かなりの大柄となってしまった。

 国内モデルと海外モデルでボディ(特に全幅)のつくり分けができればよかったのだが、開発予算上、そうはいかなかったのであろう。もちろん、つくり分けができていても、人気の下降は避けられなかったであろうが、いまほどの「存在感の無さ」は、ひょっとすると避けられていたかもしれない。

現行型シーマは、5120×1845×1510(全長×全幅×全高)mm、ホイールベース3050mm。Y51フーガよりもホイールベースを150mm延長、ロングボディ化されている
現行型シーマは、5120×1845×1510(全長×全幅×全高)mm、ホイールベース3050mm。Y51フーガよりもホイールベースを150mm延長、ロングボディ化されている

「憧れ」が足りなかったことで奈落の底に

 2021年現在の自動車社会の状況は、1988年当時とはまったく違う。メルセデス、BMW、アウディのような輸入車ディーラーが多く入ってきており、国産車であっても、レクサスという超強敵がいる。

 このような中で、ドメスティックカーの極みのような「シーマ」が戦いを挑んでも、勝てる見込みは少なく、カッコいいエクステリアデザインや、最新デジタルメーターなどの豪華なインテリア、電子制御サスペンション、DAS(ダイレクトアダプティブステアリング)、プロパイロット2.0など、日産が持つ技術を全部乗せしても、すでに奈落の底に落ちてしまったシーマを引っ張り上げることはおそらくできない。

 フラッグシップには、やはり「所有したいと思わせる情緒的価値、ストーリー」が必要だ。輸入車やレクサスが売れるのは、モデル自体の価値というよりも、やはり「ブランドへの憧れ」であろう。このような強敵がいる現代において、シーマというクルマへの圧倒的な憧れをもたせることができなければ、購入する動機はもとより、興味もなくなる。

 もう少し早い段階で、「お客様がシーマを指名買いしたくなる何らかの仕掛け」ができればよかったのだが、いまとなっては、何をやっても「引退するシーマの思い出作り」にしかならない。

現行型シーマのインテリア。流麗で豪華ではあるが、デザインや装備が10年前で止まっており、時代遅れな印象が強い
現行型シーマのインテリア。流麗で豪華ではあるが、デザインや装備が10年前で止まっており、時代遅れな印象が強い

 北米インフィニティでは、既にQ70L(シーマの兄弟車)がラインアップから落ちている。中国向けのQ70Lは現存しているが、それも時間の問題であろう。

 先日、「日産がFR車の開発を中止する」という情報が飛び交った。その際、日産の星野朝子副社長は「スカイラインは諦めない」とのコメントを出したが、逆にいうと「その他はわからない」ということにもなる。やはり、シーマ、そしてフーガは、そう遠くないうちに消滅していくのだろう。

 日産の一時代を築いたシーマの消滅は、寂しいことではあるが、それも時代の流れだ。「生まれ変わった日産」の今後の活躍を楽しみにしている。

【画像ギャラリー】バカ売れした時代もあったが、いまは… 日産のフラッグシップセダン「シーマ」の歴代モデル

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