新型ランクル300 空前の大人気! 圧倒的実力と世界のライバル

一気に2世代ほど進化したインテリア

 先代のランクルは、手を付けやすいエクステリアは何度かマイナーチェンジで手直しされてきたが、電装系が多く関わるインテリアを大きく変えることは難しく、ライバル車が続々と最新鋭のデジタル意匠となっていくなか、ランクルは取り残されていた。新型では、その「借り」を返すかのように、インテリアが一気に2世代ほど進化した。

 センターコンソール最上段にレイアウトされた12.3インチのワイドタッチディスプレイ(GXを除く全車にオプション)には、ナビやオーディオはもちろん、前輪が進んでいく先の足元の映像を、高精細に映し出すことできる。傾斜計、デフロックのオンオフ状況、アクセルとブレーキワークなども表示でき、車両状態を把握するのに役立つ。

 これらは既に他社車での採用事例がある既知のテクノロジーのため、驚きは少なかったが、オフロード走行が得意なランクルには実に適したアイテムだ。

 ただ、「最先端のデジタルインテリア」という方向では、メルセデスやBMW、ポルシェなど、ライバルメーカーの大型SUVの方が優れている。しかしながら、派手さはないながらも、清潔感と実用性の高さを感じるのは、新型ランクルの方だといえる。

新型300系ランクルのインテリア。新型では、スイッチなどのレイアウトが整理整頓された印象
新型300系ランクルのインテリア。新型では、スイッチなどのレイアウトが整理整頓された印象
先代200系ランクルのインテリア
先代200系ランクルのインテリア
高精細な12.3インチのワイドタッチディスプレイ。オフロード機能として、直前に撮影したカメラ画像を合成し、接地場所とタイヤの向きを表示するモードも
高精細な12.3インチのワイドタッチディスプレイ。オフロード機能として、直前に撮影したカメラ画像を合成し、接地場所とタイヤの向きを表示するモードも
盗難対策として新たに導入した、トヨタ初となる指紋認証スタートスイッチ。登録済みの指紋情報と一致しなければ、エンジンが始動しない
盗難対策として新たに導入した、トヨタ初となる指紋認証スタートスイッチ。登録済みの指紋情報と一致しなければ、エンジンが始動しない

パワートレインは想定内の進化、ハイブリッドに期待!!

 パワートレインは3.5LのV6ツインターボ ガソリンエンジン(最高出力415ps/最大トルク650Nm)と、3.3LのV6ツインターボ ディーゼルエンジン(309ps/700Nm)だ。どちらにも、Direct Shift 10ATを組み合わせる。先代の4.6L V8エンジンのスペックは318ps/460Nmなので、新型では大幅なパワーアップを果たしていることになる。

 WLTCモード燃費は、ガソリン(ZX)が7.9km/L(市街地5.3、郊外8.2、高速9.6)、ディーゼルは9.7km/L(市街地7.2、郊外9.7、高速11.3)。先代(ZX)は6.7km/L(4.5、6.9、8.2)であったので、約17%改善してはいるが、やはり燃費がいいとはいえない。CO2排出量(WLTCモード)は、336~347g/kmから267~294g/kmへ、14~30%ほど改善しているが、95g/kmという目標値には程遠く、高CO2排出車であることは知っておかねばならない。

 このあたりをトヨタ担当者に伺ったところ、ランクルとはいえ(カーボンニュートラルは)避けては通れないが、現時点、新型ランクルに適した電動化技術がなく、このようなかたちとなったそうだ。

 しかし、ランクルに見合う電動化技術を用意できれば、電動化は当然、検討範囲に入るとのこと。それが、通常のハイブリッドになるのか、プラグインハイブリッドのようになるのかは定かではないが、300系ランクルのライフ途中での追加があるか、楽しみなところだ。

絶妙な立ち位置を守っているランクル

 この新型ランクルと、サイズや価格、コンセプトが近い本格オフローダーといえば、ランドローバーディフェンダー110(ワンテン)や、ジープラングラーUnlimitedだろう。

 ランドローバーディフェンダー110(619万円~)は、全幅1995 mm、全高1970mmという巨体から溢れる逞しさと、堅牢感が半端ない。箱型ボディにマッシブなフェンダー、立ち上がったフロントウィンドウ、水平なショルダーライン、切り立ったテールなどは、初代ディフェンダーのデザインをオマージュしたそうだ。2.0リッター直4ターボをベースとして、上級グレードに直6ディーゼルターボをラインナップ(754万円~)。

 最大渡河水深は900mm(エアサスの場合)を誇る。5ドアの110のほか、3ドアの「90(ナインティ)」もある。ランクルよりもクラシカル寄りのデザインと、最新装備の数々、そうしたコントラストが好きな方にはおススメだ。

2021年モデルでは、待望の3.0リットル直6ディーゼルターボをラインアップに追加。300ps/650Nmを発揮するパフォーマンスを誇る
2021年モデルでは、待望の3.0リットル直6ディーゼルターボをラインアップに追加。300ps/650Nmを発揮するパフォーマンスを誇る

 ジープ・ブランドの中でも最強のオフローダーであるラングラーUnlimited(558万円~)は、走破性や耐久性の高さは世界一を目標としており、高度なオフロード性能試験に合格した「トレイルレーテッド」のバッジを全グレードが付けている。

 ラングラーは、ランクルよりもひと足先に、欧州でプラグインハイブリッドモデル「ラングラー4xe」を誕生させている。日本市場への導入は未定のようだが、やはりこの手のオフローダーにもハイブリッドは必須の時代だ。ランクルよりもド派手でハードなデザインが好きな方には、ラングラーの方をお勧めしたい。

プラグインハイブリッドのラングラー4xe(フォー・バイ・イー)が欧州で誕生。電気モーター2基と11.4kWhのリチウムイオンバッテリー、ガソリンエンジンの組み合わせとなる
プラグインハイブリッドのラングラー4xe(フォー・バイ・イー)が欧州で誕生。電気モーター2基と11.4kWhのリチウムイオンバッテリー、ガソリンエンジンの組み合わせとなる

 さらに上を見れば、プレミアムブランドのBMW X5(945万円~)、メルセデスGLE(964万円~)、Gクラス(1250万円~)、ポルシェカイエン(1096万円~)などもあるが、どれも高い悪路走破性を謡っているものの、どちらかというと、オンロードメインでオフもいけるというノリに近い。これらのクルマで、草木の茂った森の中や、砂地や岩山を走ってボディに傷がついても気にしない方は世の中にどれほどいるだろうか。

 そう考えると、税込510万円から購入でき、ギリギリ実用車と呼べる新型ランクルは、実に「絶妙な」立ち位置を守っており、これこそが、正式発売後に受注が殺到して、納車が2年待ちにもなる、ランクルの魅力なのであろう。

先代200系ランクルでは最上級グレードであったZXだが、新型である300系ではZXの上にGR SPORTが追加。そして3.0LツインターボディーゼルのGX、AXも登場した
先代200系ランクルでは最上級グレードであったZXだが、新型である300系ではZXの上にGR SPORTが追加。そして3.0LツインターボディーゼルのGX、AXも登場した

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