ライバルたちはすでに次のフェーズへ
筆者を含むメディア各社が、「GT-Rは今回が最期」だとする理由は「騒音規制」だ。新車として発売されるクルマの騒音規制は年々厳しくなってきており、2022年にはさらに規制が強化されるが、現在のGT-Rは、「2022年騒音規制」に対応できていない。そのため、これが最期だろう、と考えられているのだ。
時期から考えても、今回がこのR35型GT-Rの最終モデルとなるのはほぼ間違いない。では、「次期型GT-R」はどんな姿で登場するのだろうか。すでにライバルたちは、電動化へと舵を切っている。ポルシェはBEV(=Battery Electric Vehicle=バッテリー動力のみで駆動するEV)の「タイカン」を、フェラーリもシステム出力1000ps級のPHEV「SF90ストラダーレ」を発売している。
ご存知の通り、日産にはフェアレディZとGT-Rという2台のスペシャリティカーがある。スポーツカーであることはどちらも同じだが、「伝統を大切にする古典的FRスポーティーカー」であるフェアレディZと、「速さ=正義とするハイパフォーマンスカー」であるGT-Rとして、両者の位置づけは明確に分けられており、GT-Rには「分かりやすい速さ」が求められる。
筆者は、EVをはじめとする電動化技術、そして4WD駆動制御システム、そしてステアバイワイヤとリアステアを使った4輪操舵システムなど、日産が誇る「得意技術」を集めたハイパーハイブリッド車が、「次期型GT-R」になる、というストーリーを想像している。
だがそれだけでは、「GT-R」がこの先も生き残り続けるのは難しい。GT-Rがいつまでも憧れの存在であり続けるためには、「超高性能」のほかにも、ファンの心を揺さぶる「仕掛け」が必要だ。
GT-Rがいつまでも「憧れのGT-R」でありつづけるために
5年前まで、日産の車両開発エンジニアだった筆者にとって、R35型GT-Rがデビューした瞬間は、いまでも鮮烈な記憶として残っている。2007年に日産社内で行われたGT-R復活イベント。当時のニュル北コースの量産市販車最速タイム「7分29秒3」をたたき出す瞬間を、集まった社員全員で固唾を飲んで見守った。達成の瞬間は、地響きのような歓声が沸き上がった。
当時の開発責任者、水野和敏氏の企画であったそうだが、否応なしに強烈な印象を与えられた出来事であり、こうして感情を揺さぶられることで、そのクルマに感情移入し、ファンになっていくのだなぁというのを実体験できた出来事でもあった。ぜひ次期型GT-Rデビューの際には、このような「感情を揺さぶる仕掛け」を取り入れてほしい。
現在の市販車最速は、「ポルシェ911 GT2 RS」が2021年6月にマークした「6分43秒300」だ。R35がデビューした2007年ごろとは事情が異なり、いまや7分を切る市販スポーツカーはごろごろいる。R35GT-Rは、分かりやすいアピールポイントのひとつとして、ニュル北コースの市販車ラップタイム更新を、開発目標としていたが、全く同じことを次期型GT-Rで行うのでは芸がないだろう。
例えば、ル・マン24時間耐久レースや、国際ラリー選手権などの、国際舞台で活躍したうえで、そのままの姿で市販する。そうしたデビューの仕方もアリかもしれない。
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