2001年にコロナ・カリーナの後継車として生まれたプレミオ・アリオン。2021年3月に揃って生産終了を迎えるまでの約20年間、底堅く販売を続けてきた。
今となっては貴重な5ナンバーセダンの枠組みをしっかりと守り、その需要を受け止めてきた両車は、何を残していったのだろうか。マイカー使用のみならず、営業車や覆面パトカーなど、幅広く支持されてきたプレミオ・アリオンの持つ独特の世界観や役割を、トヨタ販売現場に従事した筆者が解説していく。
文/佐々木亘 写真/TOYOTA
【画像ギャラリー】5ナンバーセダンの完成形 プレミオ・アリオンを写真で振り返る!(12枚)画像ギャラリー他社が撤退していった5ナンバーセダンを守り切った存在
プレミオ・アリオンの生産終了となった2021年3月、両車の販売台数はプレミオが829台(前年同月比83.3%)、アリオンが411台(前年同月比153.4%)だった。駆け込み需要と言えるほどではないが、この数字を見ると日本には5ナンバーセダンの需要がまだ残っていると思えてくる。
かつてはクラウンやカムリも5ナンバーセダンだった。全長4700mm以下、全幅1700mm以下という枠組みの中で、良いクルマを作り上げる努力をしていた時代。日本車が製造面・販売面で進化していくスピードは、現在よりも遥かに大きな勢いがあっただろう。
他社、そして他車種が、5ナンバー枠の中では魅力を出しきれないと、こぞって3ナンバー化(主に全幅の拡幅)をした中で、プレミオ・アリオンは枠組みの中に残り、最後まで戦い続けた。
アリオン・プレミオは、トヨタが5ナンバーという枠組みの中で最良のものを作り出そうと本気で努力をした、最後のクルマではないかと思うのだ。
ちょっとずつ良いクルマに普通に乗りたい
良いクルマに乗りたい。自動車ユーザーなら誰しもが思い描くことだろう。ただ、この「良い」の内容は、人それぞれ違う。速い・安定感が高い・広い・豪華など様々だ。最近では、お金がかからない(経済性が高い)クルマや、予防安全性能が高いクルマのことを良いクルマという人もいる。
これらの様々な「良い」という評価ベクトルを、少しずつ取り入れて完成させたのが、プレミオ・アリオンではないだろうか。筆者はこれを「ちょっとずつ良いクルマ」と定義する。
プレミオ・アリオンはコンパクト、ラグジュアリー、コンフォート、リーズナブルという4つの価値を丁度いい具合まで高めたクルマだ。特別ここが凄いというポイントは無いのだが、満遍なく合格点を取ってくる。
筆者が営業マン時代には、アリオンをよく売っていた。トヨタ時代に最も売ったクルマの一つと言ってもいい。筆者がアリオンを紹介するターゲット層の条件はただ一つ「クルマが趣味に関係しない」それだけである。プライベートとクルマが強く結びつかない人に、アリオンは良く売れた。こうしたユーザーが「ちょっとずつ良いクルマ」を選んでいく。
最近はクルマを使った生活を、強く押し出したクルマが多い。SUVやミニバンなどは、釣りやキャンプで楽しまなきゃ人生損だよと、半ば強制されているようにも感じてしまう。アリオン・プレミオのような、ちょっとずつ良いクルマに、普通に乗りたいというユーザーは、まだまだ残っていると思うのだが。
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