自動車ディーラー栄枯盛衰に見る販売チャンネル集約の「功と罪」

■格差拡大に伴う「合理化」の果て

 このように日産、ホンダともに、今は少数の車種が国内販売を支えている。全店が全車を扱う体制になり、販売しやすい一部の人気車だけが売れゆきを伸ばした。その結果、車種ごとの販売格差も拡大している。

 そうなると合理化を図りたいメーカーは、「国内市場は軽自動車など一部の車種に任せておけばいい」と考える。そのためにホンダでは、狭山工場の閉鎖に伴い、オデッセイを廃止する方針まで打ち出した。

 リストラが進むいっぽうで売れゆきも下がり、2021年1~8月の国内販売順位は、上からトヨタ、スズキ、ダイハツ、ホンダ、日産、マツダ、スバル、三菱だ。ホンダは4位、日産は5位まで下がっている。

 過去をさかのぼると、マツダは1989年から1990年にかけて、マツダ店、アンフィニ店、ユーノス店、オートザム店、オートラマ店(フォーオブランド)の5系列体制を築いた。

カペラの後継機であるクロノス。アンフィニ店、ユーノス店、オートザム店、オートラマ店から各々姉妹機種が別名で販売されたが、それぞれの知名度が足りず売れなかった
カペラの後継機であるクロノス。アンフィニ店、ユーノス店、オートザム店、オートラマ店から各々姉妹機種が別名で販売されたが、それぞれの知名度が足りず売れなかった

 各々に専売車種が用意され、例えばマツダクロノスには、アンフィニMS-6&MS-8/ユーノス500/オートザムクレフ/フォードテルスター(オートラマ店)という姉妹車が存在した。

 この時は、マツダ店が売る車種以外にはマツダの車名を付けず、アンフィニやユーノスをブランド名にした。しかし、ユーザーはどこで買えばいいのかわからない。その結果、1990年にマツダの国内販売は59万台に達したが、91年には55万台、92年には48万台と急降下していく。

 その後もマツダ車の売れゆきは下がり続け、1996年には店舗の吸収によって5系列体制は終了した。2020年の国内販売は18万台であった。マツダの5系列体制は、販売戦略の明らかな失敗だから、その後の日産、ホンダ、トヨタと続くリストラとは意味が違う。

 それでも当時、マツダの重役が述べた「クルマの売れゆきは、販売系列を増やすほど伸びる」という考え方は、販売系列の目的を示すものではあった。

■売りやすさという「功」と格差拡大という「罪」

 クルマが普及を進める過程で、販売系列が果たした役割は大きい。全店が全車を扱わず、特定の車種に専門化することで、さまざまな車種を大切に販売できた。それをやめた結果、販売力が売りやすい車種に偏り、ホンダや日産のように特定の車種が国内販売を支える状態に陥った。

 全店が全車を扱う体制に変更したら、売れゆきの偏りを抑え、なおかつユーザーに新たなサービスを提供することが必要になる。定額制でクルマを使うサブスクリプションサービスも、そのひとつに位置付けられる。新しい試みを継続的に続けることが大切だ。


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