なんで俺らはビジホ隔離? 小林可夢偉が感じたモータースポーツの認知度

■キャリアに必要な時間を隔離でロスし続ける

どこの国から帰国するかで隔離の条件が違い、しかもそれが頻繁に変わる。全てのルールが曖昧だということに疑問を投げかける
どこの国から帰国するかで隔離の条件が違い、しかもそれが頻繁に変わる。全てのルールが曖昧だということに疑問を投げかける

 あとどの国から帰って来るかで隔離の条件も違うし、しかもそれがコロコロ変わる。最初はヨーロッパ全部ダメやったけど、次にモナコから帰ってきたらホテル隔離なしの2週間自宅隔離でOKやった。

 でもフランスから帰ってきたら3日間のホテル隔離を含めた2週間になる。ホント意味不明です。音楽フェスのアーティストたちは3日間のホテル隔離で仕事して帰ったんですけど、それができるには何かしら理由や方法があるわけじゃないですか。でも、それさえわからない。

 厳しい隔離制限は僕らだけの話じゃないからと思ってました。でも音楽フェスでこういうことをやっちゃって、さすがにそれはないやろ、僕らにも仕事させろよ、と思いました。せめて何か道標、こうやったらOKというルールを明確にしてほしい。

 制限する側の人らは関係ないかもしれないけど、僕らからすれば国内レースに出られないのは営業妨害というか、営業的に不利でしかないですからね。

 今回サッシャ・フェネストラズに入国ビザがでてレースに出られたことで、ひとつ突破口が開いたのは確かです。でもこれで状況が好転するかというと僕は難しいと思います。

 スポーツって世界にはいましかできない瞬間があるんです。久々にSFに帰ってきたけど、本来のパフォーマンスは残念ながら出せない。僕らは自分の人生に必要な時間をロスして、いい成績残してたかもしれない瞬間を捨てている。そんな僕らのリスクを、ルールを決める側の人はどこまで理解してるんかな。

 「オリンピックを開催しないのは選手が可哀想だ」って声があがったじゃないですか。それ僕らも一緒やから。オリンピック選手にそうやって声を上げてあげるんやったら、僕らのことも声に上げてほしい。

 どんなに経験があったとしても、いまという時間は残念ながら取り返せない。そこをもうちょっと理解していただきたいというのが本音です。

■モータースポーツに限らず自動車業界に変革が必要

小林可夢偉の思いは自動車産業全体にまで及ぶ。クルマとしてのEVだけでなく、どこからどうやって電気をとってくるのかまで考えなければとうったえる
小林可夢偉の思いは自動車産業全体にまで及ぶ。クルマとしてのEVだけでなく、どこからどうやって電気をとってくるのかまで考えなければとうったえる

 これから業界全体でやることはいっぱいあります。正直、自動車産業は危機にきてると思う。日本の基幹産業を守るということをメーカーだけが一生懸命やるのではなく、政治家さんと国民も一つにならないといけない瞬間だと思うんですよね。

 クルマは移動できればいいよって考える人もいます。もちろんクルマってそうなんです。ただ、あなたは50年後の日本の社会に興味ないんですか? って聞きたい。

 豊田章男社長がいま一生懸命声を上げてるのは、例えば日本の自動車が全部EVになるとしたら、それは本当に日本にとって正しいことなのか。それは誰にもわからないけど、正しくない可能性のほうが高いと思われるから、他の可能性を広げさせてくださいって言ってるんです。

 電気自動車だけでトラック輸送はできないし、もし出来たとしても電気を作ってる時に何かしら大変な事が起こるかもしれない。環境にぜんぜん優しくないかもしれない。それが50年後に出てくるんですよ。

トヨタは水素エンジンでレースに参戦することでノウハウを吸収し進化を続ける。電気自動車一辺倒ではなく、それがうまくいかなかった時の別の道を模索しているのだ
トヨタは水素エンジンでレースに参戦することでノウハウを吸収し進化を続ける。電気自動車一辺倒ではなく、それがうまくいかなかった時の別の道を模索しているのだ

 そしたらそこから切り返せるんですか? その頃に日本企業の元気がなくなってたら? いまはまだメーカーがなんとか踏ん張れる。だからこうやって声をあげれる状態でもあるし技術の開発に力を入れられる。

 けど、50年後にはもう手遅れになっていて、その時に政治家さんがどんなに頑張っても、もう取り返しはつかないんです。

 っていうことを考えると、まずはみんなが理解すること。ホントに正しい道というのが日本には他にもあるんじゃないか? と。

 その可能性を広げるために、もちろん技術もこれからもっと進めていかないと行けないし、本当のカーボンニュートラルって何なんだっていうことを、もう一回みんなで理解することが50年後の日本を豊かにすると思う。ちゃんと環境っていうものに配慮した国づくりができると思う。

 いま僕は35歳で50年後は85歳。その時、間違いだったとわかって一番後悔するのは僕らの年代じゃないかなって本当に思うんです。だから他人事ではなくて、こういうことをいまみんなで、この危機的な状態について考えてほしい。

 いわゆる『電気自動車いいよね』って言ってる人はクルマだけしかみてない。その後ろに何があるかっていうのを考えたら、どれだけバッテリー積んでるかとか荷送電にのらすとかを全部考えたら、そうではないから。そういういろいろな背景があること、それを本当にちゃんと伝えてもらいたいなと思います。

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