■急増する「CANインベーダー」とは
これらの手口のなかでリレーアタックに関しては、昨今メディアで取り上げられる機会が増え対処方法(スマートキーを電波遮断が可能な金属の箱に入れて保管するなど)も比較的に容易なことから、この1~2年は激減している。
しかし、リレーアタックの上級版ともいえる「コードグラバー」については、電波を遮断する方法では太刀打ちできない。コードグラバーはスペアキーをつくるための特殊な専用機械でスマートキーのIDコードを読み取ってスマートキーそのものを複製してしまう。
出始めの頃は数メートルの距離しか読み取れなかったが、最近では1km以上離れた場所からでもIDコードを読み込める機械が出てきているというから恐ろしい。ディーラーなどでスペアキーを作成する場合はクルマから至近距離で読み取れば良いわけで、離れた距離でIDコードを読み取るための機械はほぼ犯罪目的だと思っていいだろう。
ただし、コードグラバーが使えるのは狙ったクルマのオーナーがスマートキーを使ってドア解錠などの操作を行うタイミングに限られるため、効率はそれほど良くないとされる。
とはいえ、スペアキー作りの機器であるコードグラバーは電波遮断ポーチなどの簡易的な方法では防御できないことも覚えておきたい。
一方、リレーアタックやコードグラバーと比べて、盗難の成功率が高く効率よく盗めるのがCANインベーダーだ。スマートキーもオーナーの操作も不要。前回ベストカーwebで詳細にわたって紹介しているのでぜひ見ていただきたい。
とにかく、クルマだけあれば盗めてしまう。自宅駐車場はもちろん、オーナーの行動を追跡して勤務先の駐車場や自宅から離れた屋外の駐車場に停められたクルマを狙う。クルマの前に立ち、フロントバンパーをずらすなどしてCANインベーダーをクルマの制御システムにつなげるだけでOKだ。
CANインベーダーの場合は、最新のレクサスが主流となる。特殊な機械は高額(100万~200万円)ではあるものの、成功率からすれば非常にコスパが良い手口といえるだろう。
■通報案件! ガチでCANインベーダーの機械が販売されていた!!
ベストカーwebのCANインベーダーの原稿を書いている時、CANインベーダーとはどんな機械なのか? を調べていたところ、兵庫県警が押収したCANインベーダー本体の写真が出てきた。まあ見た目はまるきり、モバイルバッテリーか、カラーなどは昔のiPodのような体裁だ。
何か別の画像はないものかといろいろ調べていたところ、かなりヤバそうなサイトを発見してしまった。なんと! CANインベーダーやコードグラバーに関わる機器が販売されていたのだ。
使用方法を説明した動画まであり、それらはロシア語であるが英語にも対応している。指定される連絡手段は「テレグラム」だ。ご存知の方もいらっしゃるとは思うが、テレグラムといえば犯罪者からも人気の非常に秘匿性の高いメッセージアプリである。
ただし、CANインベーダーやコードグラバーはキーを紛失した時に緊急でクルマ移動をする際などに使う正規の目的もあるため、販売自体は違法ではない。これらを業務の中で必要としている業種もあるだろう。
筆者が実際にメッセージを送ってみたところ、な、なんと3時間後に返事が来た!
・日本にはこれまで何度も送っていて1度の失敗もなくすべて届いている。
・ロシアからの発送で日本に到着するまでEMSで7~10日
・送料は無料(商品代に含まれる)
こちらの素性を詮索することもなく、また、レスポンスはとても早い。
車種別のCANインベーダー使用方法についても、わかりやすい説明図までつけて送られてきた。そこにあった車種はレクサスNX/GX/IS/LX/LS/UX、トヨタRAV4/ハイランダー/カローラ/ランドクルーザープラド……。スマートキーのタイプまで記されていた。
なぜ、対象車種がレクサスやトヨタ用が主流なのかを聞いてみると、「レクサスとトヨタは人気があるから」という返事だった。
価格は日本円にして約80万円。ちなみに以前、CANインベーダーを扱う業者に聞いた時には、「正規の価格は80万円程度だが、私たちは表ルートでは買えないので海外で販売している会社の従業員に横流ししてもらっている。
その関係で中間マージンを含めると値段は2倍以上になる」と話していた。ということはこのサイトで販売されているCANインベーダーは「正規の価格」ということになるのか? 兵庫県警が押収した際も、窃盗団は「知り合いから200万円で購入した」と話していた。
コードグラバーの機械もCANインベーダーと同様の価格帯(というより少し高め)で販売されている。正規の目的で使用する人がいないとは言えないが、今話題のCANインベーダーの機械が誰でも簡単に買えてしまうサイトは看過できない。そこで、ベストカーwebでは編集部から警察にこの件を通報した。
通報したところで、日本の警察は海外が絡むと自動車盗難のような事例ではなかなか動いてくれないのが現状だ。盗まれたという確実な証拠(エンジン番号などで照合できる盗品が海外のオークションや販売サイトで売られているなど)があっても、本気を出して動いてくれることはまれ。どこまで対応してくれるのか。
※本件に関しては、取材中に知りえた違法性の高い事案として、警察庁、警視庁、県警など各所自動車盗難担当の部署、サイバー対策課へ通報いたしました。通報後の対応に関してはいくつかの当局から「記事化しないでほしい」という要請がありましたので、控えさせていただきます。もしご報告できる進展がありましたら当サイトにてお知らせいたします。
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