■警察庁へ自動車盗難に関して質問してみた
こんなに簡単にCANインベーダーやコードグラバーの装置が海外サイトから入手できてしまうとは……、まさに由々しき事態だ。
そこで、こうした最新の自動車盗難事件に関して、日本の警察はどのように対応しているのか、警察庁へ質問をぶつけてみた(質問および回答はすべて原文ママ)。
■質問1:「警察全体としまして、リレーアタックやコードグラバー、CANインベーダーなど、こうした車両盗難に対して、何か具体的な対策を取られていますでしょうか?」
■回答:「リレーアタックやコードグラバー、CANインベーダーなどと言われる手口を含め、自動車盗難を防止するためには、バー式ハンドルロックや電波遮断キーケース、センサー式警報装置などの盗難防止機器を活用していただくほか、明るく安全な駐車場を利用するなど、複数の対策を実施していただくことが効果的です。
警察庁をはじめとする、財務省、経済産業省、国土交通省の4省庁及び民間19団体から構成される「自動車盗難等の防止に関する官民合同プロジェクトチーム」では、毎年、広報ポスターを作成するなど、自動車の使用者に対する広報啓発、防犯指導を推進しており、また、各都道府県警察においても、盗難防止機器を配布するなどの取組を行っております」。
■質問2:「盗難の被害者の方に話を聞くと9割以上の方が「警察は動いてくれなかった」と言います。警察はなぜ、自動車盗難の捜査を積極的に行わないのでしょうか? また車両盗難の被害届が出されると、警察はどんな捜査を行うのでしょうか?」
■回答:「個別具体的な被害の状況により捜査内容が異なるため、一概にお答えすることはできないほか、具体の捜査手法等に関するお尋ねにお答えすることは困難ですが、被害の届出があった場合、法と証拠に基づき、適切に捜査を行っています。
警察としましては、自動車盗を重要窃盗犯のひとつと位置づけ、各都道府県警察が、捜査本部を設置したり、都道府県警察間で積極的に合同・共同捜査を行うなどして、取締りを進めています」。
……なるほど、自動車盗が重要窃盗犯のひとつだったとは。筆者の周りで国産旧車を中心とする自動車盗難の被害にあった人々に話を聞くと、9割以上が「警察は何もしてくれなかった」と話している。
被害額が億を超える自動車盗と国産旧車スポーツカーなどではまた扱いが違うのかもしれないが……。
■ちゃんと最新情報や実情に即した盗難対策を喚起してほしい!
先の警察庁からの回答にもあったが、自動車盗難防止のための、官民合同プロジェクトをご存知だろうか? 2001年9月に発足した「自動車盗難等の防止に関する官民合同プロジェクトチーム」のことである。
警察庁・国交省・財務省・経産省の4省庁と、日本損害保険協会、日本自動車工業会、日本自動車輸入組合などの団体で構成されており、2021年で発足から丸20年になる。盗難が激減したのはこのチームの活動によるところも大きいと考えられるが、最新の状況はいかがなものだろうか?
筆者もこのサイトはよくみているが、実際、盗難認知件数など数字の部分の情報以外は、15年以上前と思われるものも多数あり、全般的に古い。ピーク時の10分の1以下に盗難件数が激減したからあまり力を入れていないのだろうか? 参考までにサイトにある「盗難防止対策」を紹介しておこう。
1:確実な施錠→短時間でもクルマから離れるときは、完全に窓を閉め、キーを抜いてハンドルロックとドアロックを施しましょう
2:イモビライザーの装着→盗難被害に遭わないためにも自動車にイモビライザーを装着しましょう
3:盗難防止機器の活用→センサーが衝撃・振動・音等の異常を感知し警報音を発する警報装置、ハンドル固定器具、タイヤのホイールロック、GPS追跡装置等の盗難防止機器を活用しましょう
4:防犯設備が充実した駐車場を利用→見通しがよく、防犯カメラや照明等の防犯設備が充実し、管理された駐車場を利用しましょう
5:貴重品は車内に放置しない→車内に現金、カード類やカバン等の貴重品を置いたままにすると犯罪を誘発します。車から離れるときは、必ず持ち出しましょう
6:自動車部品への盗難防止対策→ナンバープレートやタイヤ、ホイールなどの部品ねらいに注意が必要です。盗難防止ネジなどでしっかり固定するなどして対策をしましょう
こ、これは……。正直、10年以上前の情報? と思ってしまった。やたらとイモビライザーの装着を推奨していて急増するCANインベーダー等の文字はもちろん、リレーアタックへの対処方法すら紹介されていない。
実車を使ってクルマの盗まれにくさ(防盗性能)を検証するコーナーもあるが、そこの結論も「自動車の盗難防止にはイモビライザーが効果的です」とある。昨今急増している国産旧車の盗難についてもかけらも触れられていないのは非常に残念である。
なお、以下はチームによる第21次自動車盗難防止キャンペーン(2021年10月1日~20日)のために作成された最新ポスターである。
官民合同プロジェクトという大そうな名前がついているのだから、もう少し最新の盗難手口についての注意喚起を行うべきではないだろうか。
ハンドルロックやタイヤロックも推奨されているが、入念に下見をして切断等の準備をして盗難に臨む窃盗団の手に掛かればものの数分で切断されてしまう。
防犯のためハンドルやバッテリーを外していても下見の際にはそれらを確認して代替のハンドルやバッテリーを持参して盗んでいくのだから。
警察も保険会社も自動車メーカーももう少し自動車盗難の最新情報を知って、実情に即した対策を施し、盗難車の捜査にも本腰を入れてほしい。
CANインベーダーの車種別の接続図や実際にCANインベーダーを使ってロックを解除するマニュアルや動画などが掲載されている海外サイトを見れば衝撃を受け、危機感を抱くはずなのだが……。
早急に、こうした自動車盗難装置が国内で売買されないようにする対策のほか、最新の盗難手口や防止策を正確にユーザーに対して注意喚起をすべきではないだろうか。
【画像ギャラリー】車両盗難に関わるデータをチェック!(9枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方