■全長と全幅はほぼ同じだが全高に差が
まず車内の広さやレイアウトなどのパッケージングだが、全長と全幅は軽自動車とあって同じ数値だ。ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は異なるが、ワゴンRスマイルが5mm長いだけなので同等と考えて良い。異なるのは全高で、ムーヴキャンバスは1655mmに抑えたが、ワゴンRスマイルは40mm高い1695mmだ。
この違いは車内の広さにも影響を与えた。後席に座った時の頭上空間は、ワゴンRスマイルに余裕がある。身長170cmの乗員が座った場合、ムーヴキャンバスの頭上空間は握りコブシ1つ少々だが、ワゴンRスマイルには2つ収まる。
室内高の数値もムーヴキャンバスは1285mmで、ワゴンRスマイルは1330mmだから45mm上まわる。
その代わりワゴンRスマイルの外観は、背が高いのでスペーシアのようなスーパーハイトワゴンに近い。その点でムーヴキャンバスは、少し低めの天井にスライドドアを組み合わせたから、外観の個性が強まった。
車内を個別に見ていくと、インパネの質感は同程度だ。ATレバーやエアコン吹き出し口の配置は、両車とも似ている。
異なるのはメーターで、ワゴンRスマイルはステアリングホイールの奥側に配置する一般的な方式だが、ムーヴキャンバスはインパネ中央の高い奥まった部分に装着した。前方からメーターを見る時、ムーヴキャンバスでは上下方向の視線移動は少ないが、左右方向は少し大きい。
またムーヴキャンバスでは、メーターのためにインパネに上下方向の厚みがあり、小柄なドライバーが運転席に座ると圧迫感が生じることもある。両車の機能は一長一短だ。
■座り心地か? 使い勝手か? 両車の個性は後席にあり!?
前席の座り心地と快適性は、両車ともに同程度だ。後席は、頭上空間は前述の通りワゴンRスマイルに余裕があるが、足元空間はほぼ同じになる。
身長170cmの大人4名が乗車して、後席のスライド位置を後端に寄せると、後席に座る乗員の膝先空間は両車ともに握りコブシ3つ半だ。Lサイズセダンでも握りコブシ2つ半だから、両車の後席は、前後方向の足元空間がかなり広い。
後席の座り心地は異なる。ムーヴキャンバスは座面の柔軟性が乏しく、角度も水平に近いため、乗員のサポート性はいま一歩だ。その点でワゴンRスマイルは、後席の座面が少し柔軟で、乗員の支え方に不満はない。特に快適とはいえないが、違和感のない後席に仕上げた。
ムーヴキャンバスは後席の座り心地が劣る代わりに、後席の下側に「置きラクボックス」を左右独立して装着している。置きラクボックスは引き出し式の収納設備だが、引き出した状態で中敷きを立ち上げると、バスケット状になる。
この状態で置きラクボックスの内部に買い物袋を入れると、走行中に倒れにくい。シートや床の上に置くと、走っている時の振動で倒れて荷物が散乱する心配もあるが、置きラクボックスを使えば安心だ。
ちなみに置きラクボックスは、ムーヴキャンバスのコンセプトに係わる装備に位置付けられる。ターゲットは娘のいる家庭で、平日は母親が買い物、週末には娘が友人とドライブに出かける使い方を想定している。
そして母親が買い物に出かける時は、予め置きラクボックスの中敷きを立ち上げておく。買い物からクルマに戻ったら、右側の電動スライドドアを開いて買い物袋を置きラクボックスの内部に収め、スライドドアを閉めながら運転席側に移動してスムーズに乗り込む。
ムーヴキャンバスは、置きラクボックスを使った買い物に出かけた時の導線にこだわった。そこでスライドドアの電動機能も、全グレードの左右両側に装着されている。
その代わりシートアレンジは単純だ。後席の下側に置きラクボックスがあるため、荷室を広げる時も、後席の背もたれを前側へ倒すだけだ。広げた荷室の床には、段差と傾斜ができる。
一方、ワゴンRスマイルのシートアレンジは、ワゴンRやスペーシアと基本的に同じだ。左右独立式になる後席の背もたれを前側へ倒すと、座面も連動して下がり、平らな荷室に変更できる。後席を格納した時の荷室の使い勝手は、シートアレンジが一般的なワゴンRスマイルの方が優れている。
つまり置きラクボックスに魅力を感じるユーザーには、ムーヴキャンバスが相応しく、そうでない場合はワゴンRスマイルが適する。この2車を選ぶ場合、一番の決め手はデザインだと思うが、機能的には置きラクボックスと荷室の違いで選び分けられる。
なお両車の収納設備を比べると、ワゴンRスマイルはフタの付いていないトレイが目立つが、ムーヴキャンバスにはボックスが多い。インパネの左右に装着されるカップホルダーも、ワゴンRスマイルは固定式だが、ムーヴキャンバスは引き出し式だ。収納設備はムーヴキャンバスが勝る。
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