よくこんなクルマ作ったな…マーチスーパーターボという傑作

よくこんなクルマ作ったな…マーチスーパーターボという傑作

 日本のクルマ業界がもっとも輝いていた80年代。ハイソカーブームやデートカーブームなど、いろいろなクルマが売れまくっていた時代であったが、「ホットハッチ」と呼ばれるFFハッチバックもまた、胸アツなジャンルであった。

 なかでも、「マーチスーパーターボ」は、その名の通り、エントリーファミリーカーであったK10型マーチをベースにつくられたモデルで、国内のレースで大活躍し、ファンを熱くさせていた。「マーチスーパーターボ」とはどんなクルマだったのか、振り返ってみよう。

文:吉川賢一
写真:NISSAN、HONDA、TOYOTA、SUZUKI、DAIHATSU、ISUZU

【画像ギャラリー】1989年登場のマーチスーパーターボと、同年代のホットハッチたち(27枚)画像ギャラリー

リッターあたり118ps越えのハイパワーエンジンを搭載

 K10型初代マーチの登場は、1982年のこと。3760×1560×1395(全長×全幅×全高)mm、ホイールベース2300mmと、今のクルマと比べて、2周りほど小さいが、日欧市場に向けた、エントリーユーザー向けのコンパクトなFFハッチバック、という立ち位置は、現行のK13型マーチとも変わらない。

 いまと違うのは、当時はモータースポーツ熱が高かった時代であり、このK10マーチが、単なるエントリーコンパクトカーに終わらず、これをベースとしたスポーツバージョンが続々と誕生した、ということだ。

 まず、1985年2月のマイナーチェンジの際、3ドア車にターボを設定したスポーツグレード「マーチターボ」が登場。最高出力は85ps、最大トルクは12.0kgmを達成していた。その3年後となる1988年、当時流行していた全日本ラリー選手権向けのレース車両として、ターボとスーパーチャージャーという2つの過給機を持つ「マーチR」が登場する。

排気量930cc、最高出力110ps、最大トルク13.3kgmを発生するMA09ERT型エンジン。リッターあたり118ps越えは相当パワフルだった

 このダブルチャージシステムは、当時としては非常に珍しいもので、エンジンの低回転域ではスーパーチャージャーによる瞬発力を、高回転域では高い出力を得ることに成功していた。エンジンスペックは、最高出力110ps、最大トルク13.3kgmを発生。排気量930ccのエンジンなので、リッターあたり118ps越えはなかなかパワフルだった。トランスミッションは、クロスレシオの5速MTで、フロントにはビスカスLSDも標準装備であった。

 ちなみに、FIAの競技規則変更に対応するため(ターボ係数1.7として排気量1.6Lクラスに参戦するための対応)、ベース車のMA10S型 987ccエンジンの排気量をダウンさせ、930㏄(MA09ERT型)へとコンパクト化しているが、マーチの小さなエンジンルームに、過給機を押し込んだことで、パワーステアリングを載せるスペースすら捻出できず、重ステ仕様となっていた。

 そのレース仕様の「マーチR」を一般ユーザー向けとして、内外装を仕立て直し、1989年1月に発売したのが、「マーチスーパーターボ」である。

じゃじゃ馬FFを乗りこなす楽しさが味わえた

 「マーチスーパーターボ」は、エンジン自体はマーチRと同じく、930㏄のターボ+スーパーチャージャーであったが、5速MTに加えて、3速ATも用意されていた。ボンネット上についたエアインテークやグリルに埋め込まれた円形フォグランプ、コンパクトなリアウィングなど、無骨ながらも戦闘力の高さを表すようなエクステリアデザインは、いま見てもカッコいい。

 インテリアにも、定番装備の3連メーターや、MOMO製の3スポークステアリングなど、レーサー気分を盛り上げるアイテムが奢られていた。

 車両重量770kg(カタログ値)という超軽量で、その走りは痛快そのもの。その反面、エンジンパワーが高いことで起きるトルクステアや、コーナーでアクセルオフした際のタックインが強いなど、弱点もあったが、運転好きにとっては、それを乗りこなす楽しさも、このモデルに惹きつけられる要素であったようだ。

マーチRのインテリア。レーサーの定番装備でもあった3連メーターや、MOMO製の3スポークステアリング

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