温暖化防止と内燃機関の関係は!? カーボンニュートラルのこれまでとこれから【前編】

■早くから温暖化対策に取り組んでいた自動車業界

COP3に間に合わせるために当初の予定を前倒しして、97年12月に発表された初代トヨタ プリウス
COP3に間に合わせるために当初の予定を前倒しして、97年12月に発表された初代トヨタ プリウス

 さて、そのCOPと自動車業界の関係だが、じつは自動車業界は温暖化防止(CO2排出削減)にめちゃめちゃ早くから取り組んでいる。

 COPの歴史で最初のエポックは1997年に京都で開催されたCOP3だが、ここではじめて先進国に温室効果ガス排出削減目標を課す京都議定書が採択され、数値目標の明確化や排出権取引制度の整備などが提案された。

 以前から環境規制への適合に努力してきた自動車業界だけに、数値目標ができればそれに対応した技術開発を推進するのは当然のこと。COP3以降、燃費がもっとも重要なクルマの性能指標となり、世界中の自動車メーカーが燃費改善(=CO2削減)に全力を挙げて取り組むことになる。

 ちなみに、初代プリウスが97年の12月に発売されたのは、COP3京都会議に間に合わせるべく、計画を無理やり一年以上前倒しした結果だ。

 プリウスのキャッチフレーズは「21世紀に間に合いました」だが、実際のところは「COP3に間に合わせました」というのが真相。トヨタの経営陣(と日本政府首脳)はそのくらいCOP3を重視していて、そこで日本の誇る低燃費ハイブリッドカーをお披露目するのにこだわったのだった。

 COP3以降、加盟各国は京都議定書をベースに長期的なCO2削減プログラムを設定する。

 クルマ関係ではEUが設定した「2021年までに走行1kmあたりCO2排出量を95g以下に」というCO2排出量規制が有名だが、少なくともクルマ業界においては、漸進的ではあるがバランスのとれた温暖化対策が進められつつあったといっていい。

■アメリカのまさかの『ちゃぶ台返し』

アメリカは世界一の自動車大国で産油国でもある。ちゃぶ台をひっくり返したくなる気持ちも分からなくはない!?(Rawf8@AdobeStock)
アメリカは世界一の自動車大国で産油国でもある。ちゃぶ台をひっくり返したくなる気持ちも分からなくはない!?(Rawf8@AdobeStock)

 ところが、これをぶち壊したのがアメリカの動きだった。

 2001年に就任したブッシュ(ジュニア)大統領は、なんと京都議定書からの離脱を宣言。

 途上国が参加しない京都議定書ではアメリカが一方的に経済的損失を被るほか、地球温暖化メカニズムはまだ科学的に不確実性というのがその理由だが、民主党(クリントン政権)が決めた政策を共和党(ブッシュ政権)がひっくり返すのは、アメリカ政治では珍しくない国内事情の反映という見方もある。

 このアメリカのちゃぶ台返しに「気候変動に関する国連枠組条約」を主導するEUの指導者たちは大きなショックを受けたと思う。おそらく「二度とそういう勝手なマネはさせない」と心に誓ったはずだ。

 アメリカのような大国の政策を国際条約で完全に縛るのは難しい。しかし、世論あるいは国民感情を動かす教育・広報活動は可能だし、民間企業には金融政策も有効な手段となる。また、ビジネスに不利だから温暖化防止の枠組を離脱するというのなら、離脱が逆にビジネスに不利となる仕掛けを作っておけばいい。

 アメリカの京都議定書離脱から10年以上にわたり、EUはそういう発想で制度設計や世論喚起の作業を着々と積み上げていった。

 これが、後に効いてくる……。(後編につづく)

【画像ギャラリー】世界初の量産HVとして誕生!! いまやエコカーの象徴となった現行型トヨタ プリウス(7枚)画像ギャラリー

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