なぜ新車の純正タイヤは何種類も設定されているのでしょう。しかも納車される新車に装着されてくるタイヤを指定することはできません。そのため好みのメーカーではないタイヤが装着されていることも少なくありません。
自動車メーカーは、ほとんどの場合1台のクルマに対して複数のOE(新車装着)タイヤを設定します。タイヤを製造するメーカーが違えばタイヤの性能が違ってしまうのでは? と思われるかもしれません。なのに、なぜ数種類のタイヤを用意しているのでしょう。
これには主に2つの理由があります。
文/斎藤聡、写真/Pirelli、Daimler、TOYOTA
■新車装着タイヤが複数用意されるのは「万一の備え」
ひとつは、何らかの理由でタイヤメーカーが、タイヤを製造することができなくなってしまった場合の保険の意味があります。
自動車メーカーではOEタイヤに関して“タイヤメーカーが違っても性能は同じ”という立場をとっています。これはOEタイヤがどのように作られているか、というところにも関わってくるのですが、いずれにしてもOEタイヤは複数用意されるのが一般的です。
自動車メーカーは、あるクルマのタイヤを選定する場合、求める性能を各タイヤメーカーに示して、乗り心地、転がり抵抗、操縦性、燃費、静粛性、耐久性など、いくつもの項目を設け、その基準に合った性能のタイヤを作ってもらいます。
やり方は自動車メーカーによって違いがあるようですが、クルマの開発とともにそのクルマ用のタイヤの開発を進めます。このタイヤをもとにクルマの性能を作り込んでいくわけです。あるいは期待するクルマの性能を実現するためにタイヤを改良していきます。
よく知られているのは、欧州のタイヤメーカーのタイヤ開発です。ミシュラン、コンチネンタル、ピレリなどのメーカーは、自動車メーカーがプレミアムカーやスポーツカーを新たに開発するタイミングと新型タイヤのタイミングが合うと、自動車メーカーと共同開発でタイヤの開発をおこないます。
もちろん基礎技術のブラッシュアップや、新技術・新素材の開発はタイヤメーカーで日々進められていますが、そうした新しい技術を盛り込みながら、まずは自動車メーカーのOEとして開発していくわけです。
当然仕上がってくるタイヤは、オーダースーツのように、そのクルマのキャラクターにぴったり合った特性や味付けにチューニングされています。
そして開発したタイヤをリプレイス(=市販)用として販売する場合は、同カテゴリーの他のクルマとのマッチングを図って、汎用性のある特性に作り直して販売するのだそうです。
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