ヤリス圧勝! 月販1万台超連発!! 令和の戦国時代に覇権を握った3つの圧倒的長所

ヤリスの長所は、「燃費」「軽さ」「コンパクト」

 ヤリスが売れている背景には、トヨタ自販の販売力の高さ、そして、販売を支える生産能力の高さがあることは間違いない。コロナ禍にあっても、半導体材料やその他の部品供給不足の影響を最小限に抑え、クルマを製造し続けるには、優秀な部品調達網や、生産管理能力が必要だ。もちろん、トヨタも無傷ではないようだが、極端な台数減少を起こさずに、販売を続けることができているトヨタのリスクヘッジは、他メーカーも見習わないとならないところだろう。

 ただ、それも、「ヤリス」という商品が、非常に高いレベルでつくり込まれていることが大前提。そもそもいいものでなければ、いくら販売力や生産能力があっても、ここまで圧倒的に売れるわけがない。「ヤリス」というクルマの圧倒的な長所、それは以下の3つだ。

 ヤリス最大の魅力は、WLTCモード燃費「36.0km/L」(※HYBRID_X_2WD)というハイブリッドモデルの驚異的な「燃費」だ。EVを除く、量販車史上、最高レベルの燃費を達成している。クルマが重たくなる4WDであっても30.2km/Lというハイレベルだ。

 ハイブリッドシステムは、他のモデルのハイブリットシステムと同様の「THS-II」だが、効率の良い、新開発の直列3気筒1.5Lダイナミックフォースエンジンと組み合わせたことで実現できたという。この手のクルマを購入される方は、「デザイン、燃費、コスト」の3ポイントを、冷静に見極める方が多い。なかでも、数値で示される「燃費」は、最大のセールスポイントだ。

 2つめは「軽さ」だ。ハイブリッド車であっても車重は1050kg(FF)と超軽量であり、トルクフルなエンジンも相まって、力強く滑らかに加速する。コーナーへのターンインや、旋回中のステアリング切り増し操作にも、クルマがしっかりと応答してくれるだけでなく、旋回中のブレーキングも安定している。

 ハイグリップタイヤと制御で運動性能をつくり込むような現代のスポーティーカーとは違い、グリップレベルの低い低燃費タイヤながらも、「軽さ」を武器にした軽やかな運動性能は、クルマは軽さが正義であることを実感できるものだ。

 コーナリング中にギャップを乗り越えた際などには、若干タイヤが跳ね上げられる印象はあるものの、揺れのおさまりは速く、ロールやピッチングといったボディモーションも小さく感じられる。こうした運動性能の良さは、すべて「軽量なボディ」のおかげだ。

 3つめは「コンパクト」であることだ。3940×1695×1500(全長×全幅×全高)mm、ホイールベース2550mmは、はっきり言って狭くて小さい。後席にも余裕があるノートやフィットとは違い、ヤリスの後席空間は乗員が座れる最低限の広さしかなく、後席の窓も小さいので、後席頭部付近は圧迫感があり、長くは乗っていたくない。だが、クルマがどんどん肥大化していく流れのなかにおいて、全長4m以下に収めたことは、非常にポイントが高い。

 4人が乗るクルマが欲しいならば他の車種へ行けばよいわけで、このサイズでしか得られない、取り回しのしやすさ、気軽に乗れる使い勝手のよさは、ヤリスが広く受け入れられている理由なのだと考えられる。

ヤリスは、1.5Lハイブリッドの「HYBRID_X_2WD(CVT)」が199万8000円、1.5Lガソリンエンジンの「X_2WD(CVT)」が159万8000円と、手の出しやすい価格設定となっている
ヤリスは、1.5Lハイブリッドの「HYBRID_X_2WD(CVT)」が199万8000円、1.5Lガソリンエンジンの「X_2WD(CVT)」が159万8000円と、手の出しやすい価格設定となっている

欧州でも売れまくっているヤリス

 ヤリスは、日本にとどまらず、欧州地域でも人気となっている。今年3月には、2021年欧州カーオブザイヤーを受賞、2000年の初代ヤリス(日本名はヴィッツ)以来、2度目の受賞となる。2021年6月時点のデータでは、欧州地域の販売台数において、1位のゴルフ、2位のプジョー208に続いて、3位にヤリスが食い込む人気ぶりをみせている。

 ヤリスにも、弱点がないわけではない。細かく見ていけば、クルマ細部のつくり込みにおいて、欧州のコンパクトカーと比べると、まだ粗さや妥協があるようにも思える。例えば、ドア閉じ音はVWポロのような重厚さはなく、時速30km/h以下になるとカットされるACCとLTC(レーントレースコントロール)など、最新の欧州車と戦う上で、商品力に物足りなさを感じる部分はある。

 ノートやフィットではなく、国内メーカーのモデルで、ヤリスと近しいサイズ感のコンパクトカーというと、マーチやマツダ2が挙げられるが、どちらも商品力としては、ヤリスに及ばない。ヤリスに変わるライバルがいない今、今後もヤリスの独壇場は続いていくだろう。

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