クルマを見る際や実際に選ぶ際には、トップグレードに目が行きがちなのはある意味当然である。しかし、用途による向き不向きだけでなく、総合的に見ても「2番手、3番手のグレードのほうがいい」ということも少なくない。ここではそんな「胸を張って選べる2番手、3番手グレード」を過去のものを中心に現在あるものも含めピックアップしてみた。
文/永田恵一、写真/日産、AUTECH、トヨタ、三菱、スバル、平野 学
■4WDのGT-RよりFRのGTS-tタイプMにも選ぶ意味があった!
●R32型スカイラインGTS-tタイプM
1989年登場のR32型スカイラインはスカイラインらしいスポーツ性を取り戻したのに加え、その象徴として17年ぶりにGT-Rが復活したモデルだったこともあり、GT-Rへの注目は非常に高かった。R32型スカイラインGT-Rは日本最強というだけでなく、当時のグループAレース制覇を目的に開発されたモデルだったこともあり、その性能やエンジンをはじめとしたチューニングした際の伸びしろなども考えると、当時の約450万円という価格もリーズナブルに感じられた。
しかし、R32型スカイラインGT-Rは速いクルマだっただけに性能の持て余し感や、4WDということもあり、フロントの重さによる限界域での強いアンダーステアなど、誰もが楽しめるスポーツモデルとは言い切れないのも事実だった。
その意味では基準車となるFR系で最強となる、2L直6ターボを搭載するGTS-tタイプMは充分な速さとGT-R以上のコントロール性を備えるなど、楽しいクルマに仕上がっていた。それでいて価格はエアコン付きで当時約260万円とリーズナブルで、胸を張って選べる2番手グレードの代表的な存在だった。
■AE86の再来と言われたモデルにもエレガントに走るグレードがあった
●アルテッツァAS200
アルテッツァはプログレや2代目アリストと共通のプラットフォームを使うスポーツセダンとして、98年に登場。アルテッツァは登場前には「AE86の再来」と期待され、最強モデルとなるRS200は、6速MT車で210psとなる2L4気筒NAを搭載した。
だが、アルテッツァRS200は車重が1400kg近くとパワーに対して車重が重かったことなどもあり、スポーツモデルらしいピリリとしたところに欠けていたのも否めなかった。
しかし、アルテッツァには2L直6NAを搭載した2番手グレードとなるAS200もラインナップされていた。アルテッツァAS200は160psということもあり、絶対的な速さはRS200に及ばなかったが、その代わり6気筒エンジンのフィーリングを含め全体的に上質なクルマに仕上がっており、「速さを求めない、サーキットなどのスポーツ走行をしない」という人にはピッタリのモデルだった。
ただ、ひとつの難点は6速MT車の設定がないことだったが、それも00年のマイナーチェンジでの追加で解決され、アルテッツァAS200に乗っている人の満足度は密かに高かったようだ。
■S15オーテックはターボ仕様とは異なる走りの楽しさが詰まっていた
●S15型シルビアオーテック
小型FR車の代表的な1台となるシルビアは、最終型となる99年1月登場のS15型で、ボディ剛性の向上、ハードになったサスペンション、エンジンのパワーアップ、エンジンパワーを路面に有効に伝えるヘリカルLSDの採用などにより、S14型までとは違う「ノーマル状態でもかなり遊べる、走れるクルマ」となった。
ただ、これはターボ車のスペックRにかぎった話で、NAエンジンのスペックSはS14型まで同様の「ライトな2ドアクーペ」という印象が否めなかった。
しかし、S15型シルビアの登場から約9カ月後に加わったオーテックバージョンはスペックSの165ps(5速MT)から吸排気系を含めたメカニカルチューンを施し、200psのパワーアップした2LNAエンジンを搭載。
S15シルビアのオーテックバージョンはスペックRベースと発表されているが、6速MTと組み合わされ、フロントブレーキが対向ピストンキャリパーになる点などを見ると、「スペックRのハイパワーNA仕様」というイメージだった。
それだけにS15型シルビアのオーテックバージョンはターボのS15型シルビアとは違う初代86&BRZのような楽しさを持つモデルに仕上がっており、価格の安さ以外でも選ぶ価値の非常に大きいモデルだった。
■ランエボの魂をノーマル車に吹き込んだ究極の街乗り仕様だった!?
●ギャランフォルティスラリーアート
少々ややこしい話だが、今のところ最後のランサーエボリューションとなっているランエボXのベースとなった一般向けモデルは、ボディがランエボXのものから全幅が標準幅となるなどの違いがあるギャランフォルティスだった。
ランエボXはAYCに横滑り防止装置ASCを組み合わせることにより四輪統合制御を進めたS-AWCやDCTとなるツインクラッチSSTの採用などにより、ドライバーを選ばない間口の広いスポーツモデルだったが、それを過剰に感じる人がいるのも事実だった。
というユーザーに向けランエボXとギャランフォルティスの登場から約1年後に加わったギャランフォルティスラリーアートは、車名のとおりギャランフォルティスのボディにより扱いやすい性格にチューニングされた240psの2L直4ターボ+ツインクラッチSSTとなり、リアデフはAYCから機械式LSDに変更されたパワートレーンを搭載。
ランエボXの245幅から215幅となったタイヤやサスペンションはランエボXに対し、公道向けのセッティングとなっているほか、最小回転半径も6m近かったランエボXに対しギャランフォルティスラリーアートは5.0mに抑えられ小回りも効くなど、日常使用での楽しさや扱いやすさを重視する人にはランエボXよりも好ましいモデルに仕上がっていた。
■良品廉価なセカンドグレードを自分好みに仕上げるのも充分にアリだ
●GR86RC&新型BRZ R
10月末に正式に発表されたGR86、発売ずみの新型BRZを選ぶ際には、シートヒーターなどが装備され、走りの面でも18インチのミシュランパイロットスポーツ4を履き、次のフェーズに入った最上級グレードとなるGR86ならRZ、新型BRZならSを選ぶのが基本だろう。
しかし、まだ確認し切れていない部分もあるものの、2番手グレードの新型BRZ Rと、3番手のベースグレードとなるGR86 RCにも最上級グレードにはない魅力がある。
新型BRZ Rは筆者もすでに自分のものにしているが、Rは先代86&BRZの標準系と同じ17インチとなるミシュランプライマシーHP(先代プリウスの純正タイヤ)を履き、サーキットのラップタイムに代表される速さは当然ながら最上級グレードに及ばない。
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