平成に最も成功したコンパクトカー 2代目K11型マーチ
2代目のK11型マーチにフルモデルチェンジしたのは1992年。初代モデルが直線基調のスタイリングだったのに対し、2代目では曲線を用いた優しい雰囲気のデザインで登場。どことなく古きヨーロッパの香りが感じられる「タイムレス」なデザインは当時、高く評価された。K11型では、ホイールベースが初代の2300mmから2360mmに伸ばされたが、全長は逆に40mm短縮された。
ボディは3ドアと5ドア、エンジンは1.0Lと1.3Lの2種で登場、ターボやスーパーチャージャー搭載車はなくなったが、実にしっかりとした走りをしていた。決してパワーのあるクルマではなかったが、ちょうどよいボディサイズと、使い勝手の良さ、そして価格の安さと、バランスがとれたモデルだった。
このK11型マーチのよさは、日欧で1992年のカー・オブ・ザ・イヤーを同時受賞(日本車では初)したことでも、証明されている。「ホットハッチ」という姿ではなくなったが、長く愛されたK11型マーチは、「平成に最も成功したコンパクトカー」といえるだろう。
エントリーカーとして極め、販売も成功した3代目K13マーチ
日産が、倒産の危機を耐え抜いて復活を遂げた2002年、マーチは3代目がデビューする。新開発の1.0L、1.2L、1.4Lの4気筒エンジンを投入、4ATと5速MTの組み合わせで、ほどほどの出力と低燃費実現しており、堅実な走りの良さは先代を引き継いでいた。
キャビンや前後フェンダー周りまでを覆う丸みのあるボディスタイルに、「クリクリ」とした可愛らしいヘッドランプ、やさしい風合いのボディカラーを増やすなど、女性ユーザーをターゲットにした姿へと進化した。
とくに、「パプリカオレンジ」や「サクラ」といった外装色や「カカオ」内装色といった、色味でクルマを選ぶたのしさが評価され、K12マーチは、財団法人日本ファッション協会主催のオートカラーアウォードを、2002年、2005年、2007年と、三度も受賞。
こうした戦略がヒットし、デビュー直後の2002年は13万9332台、2003年は12万3709台、2004年は10万2792台と、日産の販売を支える重要なコンパクトカーとなった。
一転、スポーツモデルのマーチ12SRも2003年に追加。エンジンはチューンされた1.2Lの直4エンジン(108ps(79kW)/6900rpm、最大トルク13.7kgm)を搭載、5速MTのみとし、ボディ補強や専用スポーツサスペンション、専用エキゾースト、エンケイ製15インチアルミホイールにポテンザRE-01を装着するなど、相当な力が入っていた。
エントリーカーとしての役割を全うし、販売的にも成功を収めた、それが3代目K12型マーチだった。
放置されながら、いまも一定の需要のある 4代目K13マーチ
現行である4代目K13型マーチは、2010年7月に登場。先代K12型マーチの大成功を元に、「エントリーコンパクトカー」としての地位を盤石なものにするため、価格を限界まで安くしてより多くのお客様の手に届くように、と開発されたモデルだ。タイで生産して日本へ輸入するという、「キックス方式」をいち早く導入したモデルでもある。
登場から11年が経過しているK13型マーチだが、小改良は定期的に施されており、昨年の7月にもアップデートされている。この改良で「インテリジェントエマージェンシーブレーキ」(車両や歩行者との衝突回避・衝突被害を軽減)や、「踏み間違い衝突防止アシスト」が全車標準装備となった。
他にも「ハイビームアシスト」や、「LDW(車線逸脱警報)」などの先進安全技術も標準装備。その結果、「セーフティ・サポートカーS<ワイド>(サポカーS<ワイド>)」の対象となり、サポカー補助金(65歳以上の登録車購入で最大10万円)の対象車となっている。
とはいえ、「クルーズコントロール」や「レーンキープアシスト」といった、ライバル車ならば当たり前に搭載している運転支援装備は、残念ながら設定すらされていない。しかし、それでもマーチは2021年度上半期で4133台(月平均では689台)、日産車の中では、リーフに続いて6番目に売れている。だが、もう限界は近い。
ちなみに、かつてマーチとモデル共用であった欧州の「マイクラ」は現在、新型のK14型となって販売されている。フォルクスワーゲン「ポロ」をライバルとして、スタイリッシュに成長したK14マイクラは、日本市場への導入が熱望されているモデルではあるが、ワイドなボディとなったことで、日本市場で求められるボディサイズを越えてしまった。また、コストやロジスティクスの問題、さらには、ノートとの顧客の食い合いなどの問題があり、おそらく実現は難しい。
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