悲運の個性派スポーツカー三菱エクリプス 時代に乗り遅れた名車が辿った軌跡

悲運の個性派スポーツカー三菱エクリプス 時代に乗り遅れた名車が辿った軌跡

 三菱「エクリプス」というクルマをご存知だろうか。三菱自動車と米国のクライスラー社が共同出資して設立した「ダイヤモンドスターモーターズ(以下DSM)」社が、かつて生産していたスポーツクーペ・コンバーチブルだ。初代〜3代目までは日本にも輸入されており、また、映画「ワイルド・スピード」でフィーチャーされたことで知った方も多いだろう。

 三菱のスペシャルティモデル「エクリプス」とはどんなクルマだったのか、振り返ってみよう。

文:立花義人、エムスリープロダクション
写真:MITSUBISHI、ベストカー編集部

【画像ギャラリー】ギャランGTOからエクリプスまで!! 懐かしの三菱スポーティクーペの歴史を写真で振り返る(26枚)画像ギャラリー

「スタリオン」の後継モデルとして開発

 初代エクリプスは、80年代の三菱を代表するスポーツカー「スタリオン」の後継モデルとしてDSM社が開発、1989年に北米で発売された。

 全長4340mm×全幅1690mm×全高1305mmと5ナンバーサイズのコンパクトなボディに、リトラクタブル・ヘッドライトのスポーティなクーペデザインが与えられたエクリプス。北米市場をターゲットにしているだけに、ポンティアック・ファイアーバードなどのポニーカー(日本で言うスペシャルティカー)を小さくしたような、存在感のあるスタイリングで登場した。

 日本に輸入されたのは1990年。4G63型2.0L 直4DOHCガソリンNAを搭載した「GS」と、同ターボにフルタイム4WDを組み合わせた「GSR-4」が導入された。ターボ車の最高出力は147kW(200ps)/6000rpm、最大トルクは274.6Nm(28.0kgm)/3000rpmというスペックで、北米仕様そのままに左ハンドルのみというラインアップで登場。姉妹車として、クライスラーのブランド、プリムスの「レーザー」というモデルも登場した。

 日本の自動車メーカーであるとはいえ、北米で開発・生産されたスポーツクーペが、「ポン」と輸入されるなんてことは現在であれば考えにくいこと。バブル絶頂期ならではの出来事だったといえるだろう。

上段が初代エクリプス、下段がプリムス・レーザー。レーザーは初代のみで消滅してしまった
上段が初代エクリプス、下段がプリムス・レーザー。レーザーは初代のみで消滅してしまった

「ワイスピ」で広く知られた2代目・3代目

 北米では1994年、日本では1995年に2代目が登場。プラットフォームは初代と同じであるものの、スタイリングは、全体的に丸みを帯びたデザインとなり、ヘッドライトも、リトラクタブル・ヘッドライトから固定式へと変わった。ボディサイズも全長4395mm×全幅1745mm×全高1295mmとやや大きくなった。

 搭載されるエンジンは初代同様4G63で、ターボのみのモノグレード設定となるが、最高出力は169kW(230ps)/6000rpm、最大トルクは389.3Nm(29.5kgm)/2500rpmに引き上げられている。駆動方式はFFのみ、5速MTもしくは4速ATとの組み合わせだ。

 1996年には、4シーターのコンバーチブル「スパイダー」も登場。オープントップは、ボタンひとつで、しかも10秒程度で開閉が可能だった。

2代目エクリプス。ボディサイズが大きくなり、丸みを帯びたスタイリングとなる
2代目エクリプス。ボディサイズが大きくなり、丸みを帯びたスタイリングとなる

 その後、1999年に3代目のクーペモデルが北米で登場するも、すぐに日本に輸入されることはなかった。日本に輸入されたのは2004年のこと。2000年に登場したスパイダーのみを、ランプなど灯火類や排出ガスの仕様を日本の法規に適合させ(ハンドルは左のまま)てのことだった。

 ボディサイズは全長4515mm×全幅1760mm×全高1355mmと、2代目よりさらにサイズアップ。エンジンは3.0L V6SOHCの6G72型を搭載し、最高出力は144kW(196ps)/5750rpm、最大トルクは267Nm(27.2kgm)/4250rpmというスペック。4シーターオープンモデル、FFで4速ATのみの設定だ。

 初代や2代目とは違い、V6エンジンが搭載されボディもサイズアップ、デザインもモダンになったことによって、全体的な印象が大きく変わり、ヨーロッパのプレミアムGTカーのようなテイストが感じられる。ターボではないので、走りも穏やかで優雅な性格になった。

 この2代目と3代目エクリプスは、映画「ワイルド・スピード」の第1作目と2作目に、それぞれチューンドカーとして登場している。北米での人気はもちろん、日本でもエクリプスが広く知られるきっかけとなった。

2004年に発売された3代目エクリプス。日本にはオープンモデルの「スパイダー」のみ導入された
2004年に発売された3代目エクリプス。日本にはオープンモデルの「スパイダー」のみ導入された

次ページは : 4代目は日本に輸入されず そして生産終了

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす ≫

最新号

S-FR開発プロジェクトが再始動! 土屋圭市さんがトヨタのネオクラを乗りつくす! GWのお得情報満載【ベストカー5月26日号】

S-FR開発プロジェクトが再始動! 土屋圭市さんがトヨタのネオクラを乗りつくす! GWのお得情報満載【ベストカー5月26日号】

不死鳥のごとく蘇る! トヨタS-FR開発計画は再開していた! ドリキンこそレジェンドの土屋圭市さんがトヨタのネオクラシックを一気試乗! GWをより楽しく過ごす情報も満載なベストカー5月26日号、堂々発売中!