■治水と保全の両立を!
このことを受け同会は当局に対して不信感を強め、抗議の意を発表すべくプレスリリースを出したところ、SNSやインターネットを通じて観客席遺構の保全に賛成する声が上がり、多摩川スピードウェイ遺構が今置かれている状況についての情報が「拡散」されたのだ。
その後、河川事務所は保全賛同の声があったことから「保存できるか可否を検討している」との回答を発表している。
しかし、多摩川スピードウェイの会副会長の小林大樹氏にお話を伺うと「柔軟な姿勢を見せているフリなのではないか」と答えており、まだ保全が確定したわけではなく、安堵できる状況ではないことは確かなようだ。
世界中を探しても第二次大戦以前に建設されたサーキットの遺構が残っている例は極めて希少であり、多摩川スピードウェイの観客席遺構は歴史的観点からも大変重要な場所である。
同時に、現在も多摩川近隣で暮らしている住民の安全を確保すべく、いざという時のための治水対策を進めていくのも最重要課題である。
今後この遺構がどうなっていくのか……両者の動向に注目していきたい。
■「多摩川スピードウェイ」のこれから
「多摩川スピードウェイの会」副会長・小林大樹さんにお話を伺った。
ベストカー「もしも観客席遺構の保存が決定した時、遺構自体は今のまま保存するということは可能なのでしょうか?」
小林「河川事務所としては法令的に厳しいという意見があります。ですが明治時代に建設されたダムが今も残るように何か手はあると考えています」
ベストカー「今後保存に向けた活動をしていくうえでの思いをお聞きしたいです」
小林「我々は治水に反対ではなく、最優先課題と考えています。工事は10月着工ですが、協議期間を延ばすことはできないか考えています。そこでお互い納得のいく回答が出てくれればと思います」
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ギャラリーでは、かつて日本にあった多くのサーキットを紹介しているので是非ご覧いただきたい。
その大半がすでに閉業しており、閉業後に遺構を残すものもあれば、跡形もなくなってしまった場所も数多い。
そして今、多摩川スピードウェイ遺構もなくなろうとしている。形あるものはいつか壊れるかもしれないが、本当になくなるのも寂しいかぎり。今後、遺構がどうなるか要注目だ。
【画像ギャラリー】歴史的な名勝負が繰り広げられたニッポン各地の今はなきサーキットたち(11枚)画像ギャラリー
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