■エアレスタイヤの実用性はどの程度か
では、現段階でエアレスタイヤの実用性はどの程度まで上がっているのでしょう。
答えを急げば、乗用車用エアレスタイヤの実用化は秒読みと言っていいくらい近くまで来ています。
いまもっとも市販に近いのはトーヨータイヤのnoair(ノアイア)でしょう。走行性能も、すでに乗用車に装着して高速走行が可能なレベルに達しているといいます。
トーヨータイヤによれば、実用化に向けた製品技術は確立したため、実際の生産ラインでの量産テストに移る、と言っています。
実際、グローバル・マザー工場である仙台工場にエアレスタイヤ用の生産ラインを導入して生産テストに移る段階に入ったそうです。2022年ころまでに量産体制を整えることを想定しています。
またミシュランは、乗用車ではありませんが、すでにエアレスタイヤを実用化しています。
大型重機であるスキッドステアローラー用のエアレスタイヤ「ミシュランXトゥイールSSL」は2018年から国内でも発売されています。これを見れば重量級車両との相性がいいことも分かります。タフネス性も期待できそうです。
乗用車用エアレスタイヤでは、ミシュランとGMが共同で研究を進めているUptis(アプティス)があります。これは既報どおり2024年の実用化を目指して開発が進められています。
このほかブリヂストンのエアフリーコンセプト、住友ゴムのGYROBLADE(ジャイロブレイド)など、ほかのメーカーもエアレスタイヤの開発は進めています。
■エアレスタイヤのこれから
とはいうものの、国産タイヤメーカーの動きは急速と言えるほどスピード感がありません。それは道路運送車両法の保安基準がハードルになっているからです。現在のタイヤの保安基準では、クルマのタイヤは「空気入りタイヤ」であることが前提で、エアレスタイヤの概念がないのです。
将来的にはエアレスタイヤが保安基準によって定められることになるのでしょうが、その基準がどのくらいのものになるのか、その「基準」が定まっていないのです。
ちなみに、保安基準は、将来的にエアレスタイヤを装着した車両が輸出入される可能性が高いこともあって、日本だけの基準というわけにはいかず、空気入りタイヤ同様世界的に通用する基準になるはずなので、日本独自で決めてしまうというわけにはいきません。
そのため、保安基準がいつ頃固まるのかというのは予想しにくいところがあります。
環境問題がクローズアップされる昨今ですから、使用済みタイヤや故障タイヤの廃棄による資源ロスなども中も幾を集める問題です。そう考えれば優先順位は低くありません。すでにお手本となる空気入りタイヤの保安基準がありますから、案外あっさりと(骨子は)決まってしまうのかもしれません。
市販直前のトーヨータイヤでは、最初はゴルフ場のカート用タイヤやテーマパークなどの移動用モビリティなど公道を走行しない車両用として販売される見込みです。
では市販できるようになるのはいつ頃なのでしょうか。
これは完全な憶測ですが、今後大きな問題が浮上しなければ2024年の市販を目指すとアナウンスしているミシュラン+GMのuptisの登場の少し前あたりにエアレスタイヤの世界的な保安基準ができ、市販車化につながっていくのではないでしょうか。そんなシナリオが思い浮かびます。
【画像ギャラリー】タイヤの常識を覆す「空気が入っていないタイヤ」タイヤメーカー各社が開発中のエアレスタイヤを見る(14枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方