気軽に楽しめるクルマではなくなったが、存在自体に価値がある
初代タイプRが設定されたNSXは、クルマ好き憧れのスポーツモデルではあるが、高額車であり、誰でも買えるモデルではない。NSXタイプRは、お金があって、なおかつサーキットのような場所でポテンシャルを引き出せるスキルを持つ人だけが乗ることを許される、そんなモデルだ。
しかし、インテグラやシビックのタイプRであれば、若者がちょっと頑張れば買うことができ、みなが気軽にFFスポーツカーの面白さを楽しむことができた。しかもシビックは、(初代シビックタイプR当時は)コンパクトなハッチバックで、インテグラよりももっと身近な存在。気軽さが最高の楽しさを与えてくれる、初代シビックタイプRはそんなモデルだった。
ところが、今のシビックタイプRは、ボディサイズも大きくなり、性能も大幅に進化した。2.0LのVTECターボは320psとなり、戦闘機のようなド派手なエアロパーツを装備する。ひと昔前のレーシングカーに匹敵する性能が与えられ、価格は、FK8型の「リミテッドエディション」では550万円にも。
ここまでクルマが進化した時代なのだから、タイプRにこれだけの性能が与えられても、当然といえば当然かもしれないが、若者が気軽に買えるモデルではなくなってしまった。タイプRが、お金もスキルもある人だけが楽しめる「夢のようなモデル」にまた遠ざかってしまった。
それでも、エコカーやSUVが全盛のこの時代に、新型シビックタイプRが登場するとアナウンスされたこと自体が、価値あることだと考えなければならない。絶滅危惧種の内燃機関スポーツカーが生き残れるのはあとどのくらいか分からないが、「タイプR」はクルマファンにとって特別な存在であり、どのような形であれホンダのレーシングスピリットが生き残ったことをホンダに感謝したい。
先日、F1で有終の美を飾ったホンダ。あのファイナルラップの感動は一生忘れられない。ファンとしては、「撤回」ということがあってほしいと思ってしまうが、この先ホンダが、バッテリーEVの世界で再び、人々の心に炎を灯すクルマを開発してくれることを、楽しみに待とうと思う。
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