2021年8月、11代目となる新型シビックのフルモデルチェンジが発表された。2022年には、この新型をベースにしたタイプRもリリースされるとのことで、「世界最速FF」の伝説をさらに塗り替えていくんだろう、という期待に胸が膨らむ。
今や「タイプR」と言えばシビックといえるぐらい定着している「シビックタイプR」だが、当初は、シビックにタイプRを設定する予定はなかったという。初代シビックタイプRにスポットを当て、その登場の経緯と魅力、そして今後のシビックタイプRの展望について解説していく。
文:立花義人、エムスリープロダクション
写真:HONDA、ベストカーWEB編集部
ホンダスポーツグレードの頂点「タイプR」
「タイプR」とは、ホンダスポーツグレードの頂点に立つシリーズで、ホンダのレーシングスピリットをピュアに反映した市販モデルのこと。最初にタイプRが設定されたのは、1992年登場の「NSX タイプR」だった。
NSX タイプRは、エンジン内部パーツの重量バランスを取ってレスポンスを向上させたほか、軽量化と足回りの最適化をし、内装には、レカロのフルバケットシートやチタンのシフトノブを装備するというスパルタンなサーキット仕様で登場。タイプR第2弾は、1995年登場の「インテグラ タイプR」。職人が手作業でポート研磨をするという玄人好みのチューニングで完成度が高く、ホンダファンを喜ばせた。
そして今回の主役「シビック タイプR」は1997年、6代目EK型シビックに設定された。以降シビックにはモデルチェンジの度にタイプRが設定され、4代目(FK2型)からはターボエンジンが搭載されている。近年は「FF最速」の座をかけて、メガーヌR.S.トロフィーRやゴルフGTIとニュルブルクリンクを舞台に熾烈なバトルを繰り広げていることで知られているモデルだ。
インテグラタイプRのヒットがきっかけに
冒頭で触れたように、シビックには当初、タイプRが設定される予定はなかったそうだが、インテグラタイプRが人気となったことで、「シビックにも!!」というホンダ内外からの熱いコールを受け、開発がスタート。
搭載のエンジンは1.6L 直4DOHC VTECで、最高出力は136kW(185ps)/8,200rpm、最大トルクは160Nm(16.3kgm)/7,500rpm。テンロクNAのVTECエンジンを積んだスポーツモデル「SiR系」と同じB16A型というエンジン型式ながら、内部パーツの軽量化、フリクション低減、吸気・排気抵抗の低減といった、他のタイプRと同様の手法で丁寧にチューンされ、高回転まで回るパンチの効いたエンジンだ。
SiRの1,100kgに対し、タイプRは1,070kgと軽量化され、パフォーマンスロッドの追加でボディ剛性を高め、サスペンションはサーキットで鍛えたハードなセッティングに。フロントにはトルク感応型ヘリカルLSDを装着し、大パワーに対応したトラクションを確保。コーナー進入で思い切りブレーキを踏み、出口で思い切りアクセルを踏めるよう、ブレーキはローターの容量アップで耐フェード性を向上させるとともに、ABSもスポーツタイプを装着した。
内装には、タイプRであることを誇るかのような真っ赤なレカロシートに、MOMO社製のステアリング、そしてチタン製シフトノブと、歴代タイプRの雰囲気を、そのまま踏襲。
このように、軽い車体を生かした痛快な走りを楽しめる、最高のロードゴーイングカーとして登場した、初代シビックタイプR。しかも価格は、200万円を切る199万8000円という驚きのバーゲンプライス。この価格と内容で、クルマ好きの若者を熱くさせた初代シビックタイプRは、インテグラタイプRと共に大ヒットした。
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