日産の超名門セダン!! ローレルの伝統と消滅の「必然」

■ローレル消滅のウラにある日本の所得の構造

 1968年当時としては先進的なメカニズムと、「ハイオーナーカー」という当時としては斬新なコンセプトで登場し、その後30年以上にわたって作り続けられた日産 ローレルが、2003年に「日産 ティアナ」に統合される形で販売終了となった理由。

 それは、直接的には「排ガス強化規制の実施に伴い、搭載していた直列6気筒エンジンを規制対応させずに廃止する」ことを日産が決めたから――ということになります。

 しかしもっと根本的なことを言うのであれば、日本人の「アッパーミドル」すなわち「中の上」という概念が1990年代の末頃には崩壊あるいは細分化し、「中の上のセダン(4ドアハードトップ)」というものが成り立ちにくくなった――というのが、日産 ローレルというブランドが消滅した理由ということになるでしょう。

 1960年代から80年代頃、いや90年代の初め頃までは、日本人が「中の上の生活」と聞いて脳裏に浮かぶ生活は――「みんな同じだった」とは言いませんが――ある程度は似ていました。

 狭いかもしれないけど庭付きの戸建て住宅に住み、肉体を酷使はしない職業に就く父親と専業主婦の母親で、ささやかかもしれないけど幸せな家庭を築く。そして、セドリックやクラウンはちょっと手が出ないけど、ブルーバードとかコロナとかよりは上等なセダンをガレージに置く――みたいな感じです。

 人によってもちろん細かな違いはありますが、おおむねこのような「手が届きそうな理想像」が多くの日本人に共有されていたことで、日産 ローレルは当初ヒットし、ローレルよりほんの少々遅れて登場したトヨタ マークII――コロナとクラウンの中間に位置するトヨタ車――も、日産 ローレル以上に大ヒットしました。

 しかしバブルの崩壊と、その後の「失われた20年」により、中間層の一部はアッパーミドルクラスのセダンを買うどころの騒ぎではなくなりました。

 また経済的な問題はさほどなかった人も、1990年代の途中頃から顕著になってきた「価値観やライフスタイルの細分化」により、アッパーミドルの4ドアセダン(ハードトップ)ではない車――当時で言うRVやミニバンなどを選ぶケースが増えてきました。

 さらにはアッパーミドルのセダンを選ぶ場合でも、高度経済成長期に顕著だった「よりゴージャスなモノが欲しい!」という感覚ではなく、例えば日産 ティアナに代表される「さりげなく上質な北欧スタイル」みたいなモノを好む人も増えてきました。

 そうなると、もちろんそれで「アッパーミドルのセダン」というジャンルが消滅するわけではないのですが、「何種類もはいらない」ということにはなります。

 物事のそういった流れの結果として、FRレイアウトのローレルとFFレイアウトの3代目セフィーロは整理され、2003年からの「ティアナ」に一本化されることになりました。

 そしてその翌年には、宿敵だったトヨタ マークIIも消滅したわけです。

 まぁマークIIは「マークX」に名前を変えて2019年まで存続しましたが、いずれにせよ日産 ローレルの消滅は、日本の中間層の消滅あるいは細分化ゆえの「必然」でした。

■日産 ローレル(8代目) 主要諸元
・全長×全幅×全高:4755mm×1730mm×1400mm
・ホイールベース:2720mm
・車重:1410kg
・エンジン:直列6気筒DOHC、1998cc
・最高出力:155ps/6400rpm
・最大トルク:19.0kgm/4400rpm
・燃費:11.4km/L(10・18モード)
・価格:234万円(2001年式メダリストG)

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