■半導体不足はこの動きにあまり関係ない
そもそも、新車の販売が好調でないと中古車市場はシュリンクしてしまう。しかし、現在は世界的な半導体不足などによって新車の生産に影響が出て、納車までの期間が伸びているのはご存じのとおりだ。
新車ディーラーは、いくら受注台数が多くてもユーザーにクルマを納車できなければ利益を出すことはできない。したがって現在の半導体不足による新車の納車遅延は新車ディーラーにとっては大きなダメージとなっているのだ。
しかし、新車ディーラーが中古車販売も行うというのは、決して半導体不足による新車販売の停滞をフォローする策ではない。すでにこういった動きは始まっていたのだ。
■中古車に対する各社の取り組み
例えば、2019年8月にホンダは国内四輪販売店に新店舗デザイン「Honda Dealer Concept 2.0」を導入し、2020年6月から展開した。
同時に2019年11月より、認定中古車の基準を厳格化し、「Honda 認定中古車 U-Select(ユーセレクト)」というブランドを立ち上げた。この新ブランドは、ホンダ車であること、修復歴がないこと、第三者機関による車両状態証明書を発行されているという3つの条件をクリアした優良な中古車のみを扱っている。
また、認定中古車制度の刷新に伴い、中古車販売チャネル名称である「オートテラス」を「Honda Cars ・U-Select(ホンダカーズ・ユーセレクト)」と変更し、店舗イメージカラーを新車ディーラーのHonda Carsと同じ白を基調としたものに統一されている。
そしてトヨタは2020年4月に、ブランドを刷新し、中古車事業の強化を行っている。これまで、「T-Value(ティーバリュー)」という中古車ブランドを「トヨタ認定中古車」に統一した。
■ディーラーから顧客の足を遠のかせないために
ホンダやトヨタのこの流れは、これまで新車ディーラーと中古車販売店にあった高い垣根を取り払い、ホンダそしてトヨタが扱う安心、安全の中古車というイメージを前面に押し出したのだ。
中古車の購入を検討しているユーザーは、ディーラー車の品質は高いけれど価格も高いと敬遠する人が多いが、新車を購入しに来た人ならば、品質が高く保証も充実していて、新車より割安な中古車に対してそれほどの不満はないはず。このようにこれまで離脱してしまったユーザーを中古車によって獲得できるということになるのだ。
どうしても新車じゃないとダメ、という人は無理だが、見積もりを取ったらちょっと予算オーバーしてしまった人に、中古車ならば買えますよと言えれば、ユーザーの裾野が広がるので販売店としてもメリットは大きいはずだ。
■中古車なら人気車種にもすぐ乗れる
最後に、国産SUVのなかでも人気の高いトヨタハリアーで新車、中古車、メーカー系中古車のどこで購入するのがベストなのかを調べてみた。調べたグレードはトヨタハリアー2.0 Zレザーパッケージ。ボディカラーはブラックだ。
新車は車両本体価格393万円で、諸費用込みの乗り出し価格が423万6700円だ。しかし、メーカーのホームページによると2021年12月10日現在納車までの期間は5~6カ月となっている。
一方、メーカー系中古車は、2021年式、走行距離0.2万kmで、支払総額436.3万円。また、一般の中古車販売店では2021年式、走行距離3kmという中古車が支払総額409万円となっていた。
価格面では一般の中古車販売店が安くなっている一方、人気車ということもあり、メーカー系中古車は新車の乗り出し価格よりも高めとなった。新車が5~6カ月待ちということを考えるとこういった中古車をすぐに手に入れるほうが得策かもしれない。
こういった事例を取りこぼさないように、新車ディーラーでも中古車販売に力を注ぐようになっているのだ。
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