Z33の先行検討車は、軽量な2.4リッター直4で開発されていた
日産コレクションギャラリーによると、Z32型が登場してから5年後の1990年代半ば、後継Z のあり方を模索する検討が社内で進められていた、という。赤いボディのこの試作車は、左ハンドルのニッサン240SXをベースにワンオフで製作された。
余談になるが、通常、この手の先行試作車は、プロジェクトチームが発足する前、先行検討開発の段階で製作される。プロジェクトは一度スタートしてしまうと、余程のトラブルがない限り、スケジュールを止めることは許されないため、時間に余裕がある先行開発の段階で、クルマの基本諸元やパッケージング、駆動方式、パワートレイン選定、サスペンション形式、タイヤサイズの変更など、所望のアイテムを入れた試作車をつくる。ベース車を改造して一台試作するのに、軽く1~2億円はかかるため、何台もつくることはない。
さて、このZ33の先行検討車の見どころは、エンジンが2.4リッター直列4 気筒のKA24DE 型エンジン(200psにチューン)を、フロントミッドシップに搭載してあることだ。Z32は、エンジンが重たい3リッターV6ツインターボ級であったことを考えると、フロントの軽量化を重点的に検証したかったのではないだろうか。Z32は流麗なスタイリングかつ、パワフルなエンジンではあったが、その重さはハンドリング的には面白くない。
筆者の想像だが、Z33の先行検討車の開発担当は、適度なパワー感の軽量エンジンで、もっとコントローラブルな2ドアクーペにしたかったのだろう。残念ながら、市販されたZ33型では、Z32に対してエンジンの排気量を500ccアップした、3.5リッターV6エンジンという、真逆の結果になってしまったが、それでこそ、先行検討をした甲斐があったといえる。Zを多く買ってくれるアメリカ人好みの、「Zにはやはりパワーが必要だ」という意見が重要視された、ということだ。
ちなみにこのZ33の先行検討車は、20 年以上にわたり日産社内で保存されていたそうで、2019年に社内の試作部門によって、当時の姿を取り戻した。日産本社ギャラリーで展示もされたそうだ。
今回の「復活」でもZがイメージリーダーに
フェアレディZは、日産伝統の大切なモデルだ。ただ、ゴーン氏の指揮によって、日産の経営が持ち直したことを考えると、ゴーン氏がいなければフェアレディZは消えていたかもしれないというのは、事実かも知れない。
日産が倒産という窮地から脱したタイミングで登場したZ33は、日産ブランド復活の狼煙となる一台だった。偶然なのか、意図的なのかは想像の域を出ないが、Zと共に、どん底から這い上がる流れは、まるで今回の新型Zの登場とそっくりだ。
新型Zの登場が示唆されたのは、2020年5月の2019年度決算および事業構造改革計画の記者会見で公開された「#NissanNext A to Z」の動画だ。そしてその4か月後となる9月、「フェアレディZ プロトタイプ」が公開された。
この新型Zプロトタイプを自信満々に発表した、内田社長の言葉「必ず日産を成長軌道に戻す」を信じている。日産の実力は、まだまだこんなものではないはず。元・日産社員としては、日産車のラインアップが、再び華やかになる日が待ち遠しい。
【画像ギャラリー】いまフェアレディZがあるのはゴーン氏のおかげ!? 世界に誇る日産の伝統スポーツモデル「フェアレディZ」(42枚)画像ギャラリー
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