■N-BOX好調の裏にあった誤算
初代N-BOXが人気車になると、2代目の現行型も売れ行きを下げることはできない。膨大な乗り替え需要があるので、成功すれば売れ行きをさらに伸ばせる。
そこで現行N-BOXは、十分なコストを費やして開発/生産されている。インパネなど内装の質が高く、前席の座り心地にもボリューム感がある。
さらに遮音を入念に行ってエンジンマウントなどにも工夫を施し、ノイズと振動を小さく抑えた。乗り心地も快適だ。初代N-BOXは、車内の広さとシートアレンジに重点を置いたが、2代目は初代をベースに上質感と快適性を高めた。
全車に標準装着されるホンダセンシングには、2代目の発売時点から車間距離を自動調節できるクルーズコントロールが備わり、軽自動車初ではないものの、運転支援機能をライバル車に先駆けて採用した。
これらの魅力を備えるために、初代N-BOXやライバルとなる従来型タントのユーザーが現行N-BOXを運転すると、改めて「欲しい!」と感じさせた。この狙いは的中して、好調な販売に至っている。
ただし現行N-BOXは、弊害も生み出した。同じホンダのフィットやフリードのユーザーまで引き付けたことだ。販売店では「フィット、フリード、さらにステップワゴンから、N-BOXに乗り替えるお客様も多い」という。
現行フィットはシートアレンジも多彩で優れたコンパクトカーだが、車内の広さを比べると、全長が600mm短いのにN-BOXが広い。全高はN-BOXが250mm高く、立体駐車場は使いにくいものの、自転車のような大きな荷物も積みやすい。加えてN-BOXは、スライドドアも装着したから乗降性も良い。
価格は、N-BOX・Lが157万9600円で、フィット1.3ホームは176万7700円だ。N-BOXは車内が広くスライドドアなどの機能も充実して、価格はフィットに比べて約20万円安い。税額も抑えられる。
これらの事情により、現行フィットは2020年に登場した設計の新しい車種なのに、売れ行きはN-BOXの30%に留まる。
先に挙げたヤリス(ヤリスクロスを除く)と比べても約50%と少ない。今のホンダでは、N-BOXだけが大量に売られ、ほかの車種は低調になってしまう。これはN-BOXの導入に伴って生じたホンダの失敗だ。
■気になる部分は試乗で確認を
またN-BOXは全般的に優れた商品だが、欠点も皆無ではない。まずメーターをインパネ最上部の奥まった位置に装着したから、小柄なドライバーが運転席に座ると、前方が見にくくなって圧迫感も生じやすい。
前席は床と座面の間隔も離れているから、長身のドライバーは座りやすいが、小柄な人はペダルの操作性に不満が生じないかを確認したい。
後席は頭上と足元の空間は広いが、タントなどに比べて座面の柔軟性が乏しい。後席を格納して、荷室を広げる機能を重視したからだ。
後席を格納する操作は簡単で、背もたれを前側に倒せば良いが、広げた荷室の床面には少し傾斜ができる。平らな荷室にはならない。
荷室高が高いためにリアゲートも上下方向に長く、開閉時には後ろ側へ大きく張り出す。縦列駐車をしているような時は、リアゲートを開閉しにくい。
走りについては、大半のグレードの車両重量が900kg以上だから、自然吸気のノーマルエンジンでは実用回転域の駆動力が不足気味だ。
登り坂を走る機会が多いユーザーは、ターボも検討したい。ターボは最大トルクが1.6倍に増えて、加速感は1Lエンジンを積んでいるような感覚だ。しかもWLTCモード燃費は、ノーマルエンジンと比べて8%しか悪化しない。
Lターボの車両価格は、Lに比べて19万9100円高いが、Lに装着されないサイド&カーテンエアバッグ、右側スライドドアの電動機能、パドルシフトなどが標準装着される。そのためにターボの正味価格は約9万円と割安だ。
販売店でノーマルエンジン車を試乗した時は、坂道も走り、パワー不足を感じたらターボにも試乗するとよいだろう。
販売店によると「N-BOXの納期は約2ヵ月、ただし2トーンのボディカラーは4ヵ月」とのことだが、半年以上を要するヴェゼルなどに比べると短い。
また今のホンダの販売店では、走行距離の少ない上質なレンタカーも用意しているから、8時間で4000~6000円の料金は支払うが、毎日の使い方を再現するような試乗チェックも行える。いろいろと試して、納得したうえで購入したい。
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