■今日まで続くミニバンの基礎を25年前に確立した初代の偉大さに改めて気づく
そして初代ステップワゴンは、床が低いから重心も下がり、走行安定性と乗り心地も優れていた。報道試乗会では開発者が「ミニバンを前輪駆動で開発することによる欠点はひとつもない。ミニバンにとって前輪駆動はベストな駆動方式だ」と語ったのを思い出す。
初代ステップワゴンはホイールベース(前輪と後輪の間隔)も2800mmを確保しており、タウンエースノア/ライトエースノアに比べると85mm、セレナと比べても65mm長かった。ホイールベースの長さも、走行安定性と乗り心地の向上に役立っていた。
このように初代ステップワゴンは、前輪駆動方式と長いホイールベースなど、今日のミニバンの要件を25年前の時点で備えていた。シートアレンジも多彩で、3列目は左右に跳ね上げて格納できる。
2列目シートがポップアップシート仕様であれば、前方に向けてコンパクトに畳めた。2名乗車時には、2/3列目の両方を格納できるから、車内の中央から後部が大容量の荷室になった。
また、2列目シートを後ろ向きに回転させ、対座レイアウトにできる仕様も用意されていた。回転対座シート、ポップアップシートともに、2/3列目をリクライニングして連結させると、車内をフラットなベッドのようにレイアウトできた。
収納設備も充実しており、助手席の前側にはアシストトレイ付きのボックスと、グローブボックスが上下に並ぶ。コインポケットやカップホルダーなども備わっていた。
以上のように初代ステップワゴンは、メカニズム、車内の広さ、乗降性、シートアレンジ、収納設備まで、さまざまな機能が先進的で今のミニバンに近かった。
そして初代ステップワゴンは、初代オデッセイ(発売は1994年)、初代CR-V(同1995年)、S-MX(同1996年)と併せて、空間効率の優れた「クリエイティブ・ムーバー:生活創造車」という車種ラインナップを構成している。多くのファミリーユーザーから愛用された。
■初代のシンプルさは、ライバルの登場とともに消えてしまい、残ったのは……
初代ステップワゴンは、発売の翌年となる1997年には、1カ月平均で約9160台を登録している。先代モデルの1カ月平均登録台数は、前述の3300台だから、3倍近い売れゆきだった。
ちなみに現時点で1カ月の登録台数が9000台を超える小型/普通車は、ヤリス(ヤリスクロスを除く)やルーミーなど、人気の高い一部のコンパクトカーだけだ。初代ステップワゴンの売れゆきは絶好調であった。
そして初代ステップワゴンには、現行型とは違うシンプルなツール感覚があった。水平基調のボディは、今日のクルマで頻繁に表現されるエモーショナル(情緒的)とは無縁だが、長く使っても飽きのこないデザインだ。運転席に座るとボディの四隅がわかりやすく、前後左右ともに視界も優れていた。バックモニターなどが装着されていなくても、不安なく車庫入れや縦列駐車を行えた。
この実用性と扱いやすさ、背伸びをしない好感の持てる雰囲気は、今のホンダ車ではN-BOXの標準ボディが最も近いように思える。N-BOXは軽自動車だから、2列シートで乗車定員も4名だが、「これで充分、いや、これが欲しい!」と思わせる感覚はよく似ている。
ステップワゴンは、フルモデルチェンジを行う度に豪華さやエアロ仕様のカッコよさを追い求め、本質から外れたのかもしれない。その原点がN-BOXには宿り、高い人気を得ている。新型ステップワゴンは、初代モデルの人気を回復できるだろうか。それとも先代型のように、伸び悩んでしまうのだろうか。
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