技術がわかれば戦略がわかる ダイハツ製HVと日産製HVどこが違ってどこへ向かう?

バッテリーEVに近い日産e-POWER

 日産は、ノートe-POWER発売の当初から、e-POWERをハイブリッドと呼ばず、「電気自動車の新しい形」として訴求しています。シリーズハイブリッドそのものは、目新しいものではありませんが、バッテリーEVを推進する日産らしい最新の技術と制御を組み合わせたシステムです。

 e-POWERでは、大きなモーターとバッテリーを搭載して、エンジンで発電した電力をいったん大容量のバッテリーに蓄え、その電力でモーター走行します。エンジンは、基本的には車速とは無関係にエンジンの効率のいい2000rpmと2400rpmで定点運転するので、燃費向上に有利です。

 またバッテリー容量が大きいので、通常の街乗りではエンジンの起動回数が少なく、その分、燃費向上と静粛性に優れた力強い走行が楽しめます。

 一方で、大きなモーターとバッテリーが必要なのでコストが高くなる、バッテリーEVと同じように高速運転で燃費が悪化しやすいという課題があります。

ノートは、2016年のマイナーチェンジでe-POWERのハイブリッドモデルを追加で設定。2020年の3代目ノートから、e-POWER専用モデルとなる
ノートは、2016年のマイナーチェンジでe-POWERのハイブリッドモデルを追加で設定。2020年の3代目ノートから、e-POWER専用モデルとなる

エンジンが主役のダイハツe-SMART

 ダイハツのe-SMARTに関しては、「なぜトヨタのTHS-IIを採用しないのか」と疑問に思った方は多いでしょう。トヨタとシステムを共用化すれば、コスト低減を図ることが可能なのに、ダイハツは、なぜシリーズハイブリッドを選択したのでしょうか。

 その背景には、ダイハツの将来を見据えた電動化戦略があります。電動化で後れを取っているダイハツにとっては、小型車だけでなく、軽自動車への展開も可能な小型の低コストハイブリッドシステムが必要。THS-IIは効率に優れますが、機構が複雑でコストがかかりますし、かといって、簡易なパラレルハイブリッドでは、燃費改善効果が物足りない。ダイハツが得意とする軽量の小型車にはシリーズハイブリッドが適していると考えたのです。

 しかしながら、日産e-POWERのような大容量のバッテリーを搭載したシステムではコストがかかるので、e-POWERの半分程度のバッテリー容量とし、エンジンの起動頻度が上がり、静粛性と燃費向上代の低下については、SUVでもあることから、ある程度割り切る判断をしたと思われます。実際のところ、ロッキーは車速が40km/hを超えるとかなりの頻度でエンジンが起動します。

2019年に22ヶ月ぶりに小型クロスオーバーSUVとして復活。そして、2021年11月にe-SMARTハイブリッドモデルを追加で投入。トヨタのライズは、基本性能やデザインがほとんど同じ姉妹車
2019年に22ヶ月ぶりに小型クロスオーバーSUVとして復活。そして、2021年11月にe-SMARTハイブリッドモデルを追加で投入。トヨタのライズは、基本性能やデザインがほとんど同じ姉妹車

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 この両者の違いは、小型車が多いダイハツと、上級モデルも抱える日産、というメーカーの違いによるもので、どちらが技術的に優れている、というものではありません。どちらも、容易にバッテリーEVに変更できるシリーズハイブリッドの将来性を見据えた、素晴らしいシステムです。

 前述したように、ダイハツは将来的に、軽自動車のような小型車に展開できるよう、超コンパクトなサイズでe-SMART ハイブリッドを作りました。対する日産も、コンパクトカーよりも大きなミニバンやSUVに対応する、パワフルなe-POWERを開発中です。両社ともに、今後の横展開が楽しみです。

【画像ギャラリー】どちらも同じシリーズハイブリッド!! 「e-SMART」のロッキー/ライズと、「e-POWER」の日産ノートシリーズ(41枚)画像ギャラリー

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