ファミリーユースのツボを徹底的におさえた
2代目シエンタで最も特徴的なのはそのエクステリアデザインだろう。
全体的に塊感のあるフォルムを基本にしつつ、ボディサイドまで伸びるヘッドランプとグリルがつながったような形状のガーニッシュは、ユニークでスポーティだ。ベルトラインからリアドア見切りに連続する曲線と、リアタイヤからつながるようなサイドプロテクターによる一筆書きのグラフィックも、独創性とダイナミズムを表現している。
トヨタによると、エクステリアのデザインイメージは「トレッキングシューズ」だそうだ。機能性とデザイン性が融合したシューズは、確かにアクティブなイメージを表現するのにぴったりだ。
インテリアもなかなかよく出来ている。初代のセンターメーターは廃止され運転席側に配置されたが、ステアリング上から見通すタイプで、機能性と先進性を両立させた。
ヒップポイントを後席に行くほど高くする「シアターレイアウト」を採用し、乗員全員が気持ちよく移動できる空間を目指しつつも、乗り込み高さを330mmと低い位置に設定することや、セカンドシートスライド、リクライニング、サードシートダイブイン格納など、限られたスペースでよくもこんなに機能を盛り込んだものだと思うくらい、ファミリーユースのツボをおさえている。もちろんハイブリッドの設定で経済性への配慮もぬかり無い。
次期型では新型ノア/ヴォクのような大幅な進化を期待!!
日本の道路事情でも扱いやすいサイズと、見た目以上に実用的な室内空間、個性的なデザインが魅力のシエンタだが、冒頭で触れたように、2020年5月頃から売上に陰りを見せ、ライバルのフリードが売り上げを伸ばしている。
この理由としては、フリードがシエンタとは違って、プレーンで万人受けするデザインである、ということがあるだろう。フリードは2019年のマイナーチェンジで、内外装デザインを更新、クールでスタイリッシュな新しいフェイスを得た。このフリードならば、たとえば子育てを終えた世代がステップワゴンから乗り換えるというのも納得できる。
一方、2015年7月に登場した現行シエンタは現在7年目、2018年9月に一度目のマイナーチェンジを行ったが、ヘッドライトやテールライトの意匠を微修正した程度で、イメージを変えるまでにいたらなかった。カジュアルに振っているシエンタのデザインは、ある程度の年齢層にとっては受け皿になりにくい。フリードから販売台数を取り戻すには、大刷新が必要だろう。
加えて、現行シエンタは加速した時のエンジン騒音がなかなかにうるさく、走行中の質感はフリードに大きく劣る。そのため、新型アクアと同じくTNGA(GA-B)プラットフォームの採用や、新型アクアに搭載された「バイポーラ型ニッケル水素電池」に切り替えるなどして、走りの質感の改善が待ち遠しいところだが、筆者は、シエンタの次期型はまだ先で、次回の商品改良は、ビッグマイナーチェンジに留まるのでは、と予想している。
2022年1月に新型が登場した同社のミドルサイズミニバン「ノア/ヴォクシー」では、フリーストップバックドアや2列目の超ロングスライド、3列目シートの格納方法など、ミニバンとしての魅力を徹底的に昇華させてきた。これら新アイテムのいくつかは、当然、現行型シエンタにも装備できるはずだ。
ビッグマイナーチェンジで、デザインも、より万人受けするプレーンなものに一新し、インテリアの使い勝手向上や、先進支援技術も充実させるなど、驚くほど商品力を引き上げてくるものと考えられる。車格に見合ったプライスの付け方も、トヨタは上手い。新型シエンタへの期待は大きく膨らむ。
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シエンタやフリードといった3列シートモデルが売れ続けるのは、ファミリー層からの絶え間ないニーズがあるためだ。現在は、フリードに先をこされてはいるが、黙って指をくわえてみているトヨタではないだろう。
トヨタのマーケティング能力と、それを実車に落とし込む技術力、高いと思わせない価格。これらがきちんとハマれば、シエンタは必ず次のマイナーチェンジ(もしくは次期型)で、再びライバルを凌駕する地位に返り咲くにちがいない。2022年秋頃と噂されている、新型シエンタの登場が楽しみだ。
【画像ギャラリー】次期型で王座奪還を目指すトヨタ「シエンタ」と、ライバルのホンダ「フリード」(23枚)画像ギャラリー
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