■軽自動車規格の変更とともに安全性も強化
これらに加え、上級クラスに準じた側面衝突への対応も求められるようになった。新安全基準は1996年6月に発表されていたから、軽自動車メーカーは当時の最新テクノロジーを駆使して開発にあたっている。
そして1998年10月、新規格をクリアした新型軽自動車が一斉にベールを脱いだ。当然、ボディ剛性は大幅に高められ、走りの実力は驚くほどレベルアップしていた。また、衝突安全性能だけでなく予防安全性能にも力を入れるようになる。
施行された最初の新規格軽自動車はメーカー、車種によって衝突安全性にバラツキがあった。だが、2世代目からは高張力鋼板の使い方やボディのつぶし方に工夫を凝らし、コンパクトカーと遜色ない安全性を獲得するまでに進化している。
21世紀になるとダイハツのMAXがブレーキのロックを防ぐABSに加え、横滑り防止のトラクションコントロールも統合制御徐々に装備されるようになる。
2010年代になると燃費競争が激化するとともに再び安全性能の強化に取り組むようになった。安全性能を高めながら軽量化にも励み、上級のコンパクトカーと同等レベルの衝突安全性を実現している。ボディが小さく、車重が軽い軽自動車は、大きくて重いクルマとの衝突には不利だ。
質量の大きいクルマは当たった時に攻撃性が強く、軽いクルマを大きく破壊する。しかも大きなクルマは、衝突時にボディを潰すことで衝撃を吸収するクラッシャブルゾーンが多いからダメージも小さいことが多い。逆に小さいクルマは大きな被害を被るのだ。
大きくて重いクルマはドライバーや同乗者の安全を守りやすい。安心感もある。だが、軽くて小さなクルマでも衝突時の被害を最小レベルに抑えようという「コンパティビリティ」の考え方が浸透してきた。
軽自動車も構造を緻密に解析し、ボディのつぶし方など工夫するとともに材料や部材を適材適所に配し、コンパティビリティ対応ボディを生み出している。
最新の軽自動車は、ピラーやシートベルトにも新しい技術を盛り込んでいるから、ちょっと設計の古いコンパクトカーより高い安全性を確保しているのだ。毎年公表される「JNCAP」の結果を見れば、最新の軽自動車のすごさが分かるだろう。
また、予防安全についても剛性を高めるスタビライザーを装着したり、横滑り防止のトラクションコントロールを搭載してハンドリングと事故回避性能を大幅に高めている。
それだけではない。2006年にダイハツは時代に先駆けてプリクラッシュセーフティシステムを発表した。そして12年にレーザーレーダーを用いて車両の前方を監視する予防安全機能のスマートアシストをムーヴに搭載している。
これ以降、前走車や止まっているクルマとの衝突をとっさの時に回避する自動ブレーキの機能を備えた衝突被害軽減ブレーキは急速に搭載車が増えていく。
今ではカメラを追加して車だけでなく人間にも反応する衝突被害軽減ブレーキや誤発進抑制制御、車線維持/ステアリング支援などの機能を加えた軽自動車も珍しいものではない。
ホンダが軽自動車の世界に先鞭をつけた全車速追従機能付きオートクルーズコントロールも普及しつつある。
カタログなどで先進安全装備をチェックしてみれば、設計の古いコンパクトカーより軽自動車の方が安全装備を充実させていることが分かるだろう。
パッソ/セッテ、マーチは追従クルーズコントロールや車線維持などの機能はない。ルーミーやシエンタなどのハイトワゴンも同様だ。コンパクトカーにはアイドリングストップ機能のないクルマも少なくない。
販売合戦が熾烈で、女性ユーザーも多いのが軽自動車だ。コンパクトカーよりモデルチェンジのサイクルは短いし、マイナーチェンジのたびに快適装備と安全装備を充実させている。
先進安全装備は日進月歩で進化しているから、軽自動車を選ぶにしろ、コンパクトカーを選ぶにしろ。基本設計の新しいクルマをオススメしたい。もちろん、必ずシートベルトを装着するなど、基本を守ることが安全の大前提だ。
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