なぜ続いてしまったのか? トヨタ系列販売店の不正車検問題の背景を斬る!!

■時間と利益に追われ、現場は不正に手を染めた

不正の理由は「時間」と「売り上げノルマ」だという。ネッツトヨタ愛知は再発防止策を掲げているが、根本の問題である検査の体制や整備士の抱える問題の解決に繋がるとは思えない(画像:buritora@Adobe Stock)
不正の理由は「時間」と「売り上げノルマ」だという。ネッツトヨタ愛知は再発防止策を掲げているが、根本の問題である検査の体制や整備士の抱える問題の解決に繋がるとは思えない(画像:buritora@Adobe Stock)

 愛知県警によると、書類送検された10名は、不正車検を行った理由について、「適切な検査方法は時間がかかる。売り上げのノルマがあった」「車検に要する時間を短縮し客を待たせないため」と話しているという。車検が利益のためにあり、正しく機能していなかったことがよくわかる。

 ネッツトヨタ愛知が発表した文書には、課題として「現場の実態の認識不足」が挙げられているが、実状を理解したところで、車検の作業時間を切り詰め利益を高めるという素地が変わらなければ、また同じ過ちを繰り返すだろう。

 再発防止策を見ても、「良質なコミュニケーション、風土づくり」「コンプライアンス意識の醸成」「正しい業務オペレーションの実践」「職場環境・処遇の改善」と綺麗な言葉が並んでいるが、検査の体制や整備士の抱える問題を、どう解決するのかについては、まるで見えてこない。

 なぜ、国家資格を保有する誇り高き自動車整備士が、公正をつかさどる自動車検査員が、このような不正を働かなければならなかったのか。

 時間を迫られ利益に追われ、正しいと思う仕事ができなくなった整備士の状況を、本気で理解し問題解決をしていかなければならないと思う。

 問題発生から今まで、真摯に考えようとする姿勢が、メーカーや販売店の上層部からは感じられない。

 従業員10名(副店長1名、検査員9名)が書類送検されたという事実を、メーカーや販売店は、もっと重く感じるべきだ。現場に責任を押し付け、代表者や責任者は何のお咎めもなくていいのだろうか。

 今回の書類送検が、一連の問題に対して、単なるトカゲのしっぽ切りにならないことを祈るばかりである。

■クルマの保有台数増・電子化… 現状に合致した車検の改良・変更を

電子化が進んだことで車検にはより多くの時間が必要になった。ユーザーや販売店、そして日本の自動車産業全体のためにも、トヨタがメーカーとして何をすべきか、今一度考えて欲しい(画像:Kumi@Adobe Stock)
電子化が進んだことで車検にはより多くの時間が必要になった。ユーザーや販売店、そして日本の自動車産業全体のためにも、トヨタがメーカーとして何をすべきか、今一度考えて欲しい(画像:Kumi@Adobe Stock)

 今では当たり前のサービスになっている短時間車検だが、このサービスを先陣を切って始め、広げたのはトヨタ自身だ。

「スーパークイック(SQ)車検」と呼ばれ、預かり作業の車検を待ち作業にするという画期的な仕組みは、他メーカーや車検専門店などに広く普及することとなる。

 トヨタだけの付加価値であった短時間車検が一般化されたことで、短時間車検でも競争が激化した。

 価格を下げて作業時間を削り、効率化という名の薄利多売を現場に強いた結果、莫大な負荷がかかり、今回のような不正が常態化したのだと思う。

 SQ車検が生まれた当時と比較して、クルマの保有台数は増え、整備・検査台数も増えている。クルマは高度に電子化されており、整備・検査に時間がかかることもあるだろう。開発当時と同じような手順で、SQ車検を行える状況と言えるかは甚だ疑問だ。

 こうした疑問を販売店はもちろん、メーカーにも持ってもらわなければ、不正車検はまた必ず起こる。販売店の自浄にまかせることなく、メーカーが主導的に考える必要があることを、トヨタはもっと強く認識したほうがいい。

 車検の新時代を切り開いたSQ車検でも、今の時代と状況に合わせて、常にブラッシュアップを続けなければ意味がないだろう。

 メーカーは、生み出したクルマを、何十年も改良せず、そのまま生産し続けるだろうか。適時改良し、大幅な変更をしながら高い商品力を維持しているはずだ。

 こうした作業が必要なのはクルマだけではない、サービス(整備・検査)に関しても、改良・変更が必要である。

 何十年も前から燻り続けてきた問題が、整備士の書類送検という最悪の結果を生み出した。

 大切なユーザー、販売店、従業員、そして日本の自動車産業全体のために、トヨタがメーカーとして何をすべきか、今一度考えて欲しい。

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