■スポーツカーの暗黒時代
安全基準、排出ガス規制、それにオイルショックまでが加わった1970年代中盤は、まさしくクルマにとっての暗黒時代。とりわけ性能を重視するスポーツカーの類にとっては、それこそ存続の危機というような時代であった。
それを反影するかのように1973年にはフェアレディZにとっての看板モデルというべきZ432、240Zシリーズがフェードアウトする。残ったL20型搭載モデルは「48年排出ガス規制」が加えられる。
先の240Z登場もそうだったが、汎用エンジンを搭載していたメリットが、Zの存続を許した、といってもいいだろう。汎用故にフレキシブルかつ迅速な対応ができたのだ。
性能面で牙を抜かれた感があり、販売面でも挽回を狙って新たなモデルが1974年1月に登場してくる。ホイールベースを300mm延長し、リアに+2シートを設けたフェアレディZ 2by2である。
スポーティな性能を半ば諦めて実用性を追い掛けたモデルというわけだ。これがヒットするから、果たしてピュアなスポーツカーが必要なのか、といったような誤った認識を持たせるに至ってしまうのだった。
1975年には「50年排出ガス規制」に対応するためにL20型エンジンにインジェクションを装着、「NAPS」という排出ガス浄化システムを導入。重量は初期モデルに較べ、100kgほども重くなっていた。
輸出モデルはパワーを保つために2.6L、2.8Lと年々排気量をアップして対応している。国内モデルは、ステレオなど装備を充実させた上級モデルフェアレディZ-Tを追加、それが最後の話題となった。
4年ごとのモデルチェンジが多かった中で、結局8年間生産がつづけられ、1978年8月にモデルチェンジされたS130系に後を譲り、フェアレディZの第一世代、S30系は姿を消したのであった。
【著者について】
いのうえ・こーいち
岡山県生まれ、東京育ち。幼少の頃よりのりものに大きな興味を持ち、鉄道は趣味として楽しみつつ、クルマ雑誌、書籍の制作を中心に執筆活動、撮影活動をつづける。近年は鉄道関係の著作も多く、月刊「鉄道模型趣味」誌ほかに連載中。季刊「自動車趣味人」主宰。日本写真家協会会員(JPS)
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