2022年2月、米流通大手Amazonは、業務系、技術系の従業員の最大基本給を日本円にして1840万円から4025万円へと、今までの倍以上に引き上げた。
衝撃的な数字だが、これでもグーグルやアップルなどのライバル企業と比べると、まだ「若干劣勢」なのだという。
これに対して、日本企業はどうだろうか。 ジャーナリスト井元康一郎氏が、ソニー・トヨタの給与も引き合いに出しながら、日本の技術者・エンジニア、そして自動車メーカーの待遇の現状と今後を考える。
文/井元康一郎、写真/AdobeStock(メイン写真=dc-studio@AdobeStock)
【画像ギャラリー】日本の技術者・エンジニアの年収は低すぎるのか? 現状と課題と解決に向けた提言をギャラリーで時短チェック!(5枚)画像ギャラリー■アマゾン「年収倍増以上」の衝撃
今年2月、アメリカの流通大手、Amazon(アマゾン)が業務系、技術系の従業員の最大基本給を従来の16万ドル(1840万円=1ドル115円換算)から2倍以上の35万ドル(同4025万円)への引き上げを社内に通達したことが複数メディアによって報じられた。
ここでいう「従業員」とは、マネージャー、ディレクターなどの管理職を除く一般社員のこと。
従来、アマゾンは業績や成果に連動したボーナスを手厚く支払うことで従業員をつなぎとめてきたが、近年はアマゾンでキャリアを積んだ人材が他社に転身するというケースが続出。
それをつなぎとめるべく、ボーナスなどのオプションはそのままに基本給を引き上げて定着率をアップさせようというわけだ。
■欧米と日本との「職種と給与」の違い
バブル崩壊以降、サラリーマンの平均賃金がほとんど上がらずにきたデフレジャパンから見るとうらやましいかぎりの数字だが、もちろん4000万円というのは皆がもらえるものではない。あくまで法務、財務、研究開発といった中核分野の、それも「デキるヤツ」に適用される話である。
アメリカやヨーロッパでは仕事によって給料がぜんぜん違うというのはふつうのこと。
例えば同じ技術開発でも、コンピューティングや情報通信は無茶苦茶高く、機械設計は安い。働くほうもそのことを理解し、仕事と生活のバランスを考えてキャリアを選ぶというのが一般的だ。
このあたり、一括で新卒人材を採用し、企業の側が仕事を割り振る日本とは大きく事情が異なる。
今でさえ若年層のあいだでは配属先によって出世の道がある程度決まってしまうことを指して「配属ガチャ」などという言葉が使われているほどだ。その日本で職種間に極端な賃金格差をつけたら、それ自体が社会問題になりそうだ。
その日本企業も悠長なことは次第に言えない状況になってきている。
特に情報通信や電気、エネルギーなど次世代分野の研究者やエンジニアは世界的に引っ張りだこ。和を以て貴しとなす、が大事などと悠長なことを言っていては、世界的な人材獲得合戦で負けるだけだ。
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