アマゾンは年収1800万円から4000万円へ! 日本でも技術者、エンジニアの年収は低すぎるのか? クルマ界の待遇はどう変わる?

■自動車メーカー含め高額報酬にトライする企業も増えてきた日本 しかし

 ということで、新卒人材の初任給を大幅に引き上げたり、優秀な人材を高額な報酬で囲ったりといったことにトライする企業はかなり増えてきた。

 が、それらも決してうまく行っているとは言い難い。状況の変化が大きいのは何あろう、自動車メーカーである。

 高度経済成長時代から長らくの間、自動車産業は日本における圧倒的な基幹産業であり続けた。

 クルマが一般人にとって魅力的な商品であり、終身雇用が安定的であった2000年頃までは日本におけるヒエラルキーの頂点という立場を生かし、優秀な人材を取ろうと思えばいくらでも取れたのである。

 今日、様相は劇的に変化している。安定した仕事に就きたいという人には日本の自動車メーカーは依然として魅力的だが、野心的な人材にとっては魅力が薄れてきているのだ。

 トヨタやホンダは従業員に、高い能力を持つ人材が身内や知人にいたら紹介してほしいと社内に通達を出している。それだけ求心力が弱まっていることの証だ。

■自動車メーカーからの人材流出が徐々に深刻になりつつある

 一方、自動車メーカーからの人材流出も徐々に深刻になっている。代表例はIT系。

 ある自動車メーカーから日本のIT企業に転身した筆者の知り合いの情報通信系のエンジニアは、「今の年収を聞かれ、答えると即座に『じゃ、ウチはその2倍出す』と言われました。鬼気迫るものを感じましたね」と語る。

 冒頭でアマゾンが基本年俸を4000万円に引き上げたと述べたが、それでもグーグルやアップルなどのライバル企業に比べてまだ若干劣勢であるという。

 それらの企業と直接対決する必要がある日本のIT企業は、とっくにエンジニアの報酬引き上げに取り組みずみ。

 ソニーの2020年度の組合員平均年収は1057万円と、クルマ業界盟主のトヨタに約200万円の差をつけている。

■自動車メーカーも知恵を絞ってはいるものの、根本的な問題解決には至っていない

給与体系が本体とまったく異なる別動隊企業を作り厚遇する、というのが自動車メーカーが生み出した苦肉の策。しかし根本的な解決にはならない。本体のエンジニアの待遇アップがこの先の課題だ(totojang1977@AdobeStock)
給与体系が本体とまったく異なる別動隊企業を作り厚遇する、というのが自動車メーカーが生み出した苦肉の策。しかし根本的な解決にはならない。本体のエンジニアの待遇アップがこの先の課題だ(totojang1977@AdobeStock)

 海外のメガプラットフォーマー以前に国内企業との戦いでも圧力を受けている自動車メーカー。だが、自分が草刈り場になるのを指をくわえて見ているわけではない。

 クルマ作りの現場である生産部門に大勢のワーカーを抱え、彼らとある程度バランスを取らなければ社内の不満が増幅するという難しいハンドリングを迫られるなかから生まれた奇策が、給与体系が本体とまったく異なる別動隊企業を作り、そこで厚遇するというやり方である。

 各社がシリコンバレーをはじめ、世界各地に設けている先端分野の研究所には高給エンジニアが数多く在籍しているし、同様の「サンクチュアリ」を日本に作るケースも出てきている。

 技術者、科学者はモノやサービスなどの競争力を上げるための原動力。決して軽く扱っているわけではないのだ。

 が、一部の人材だけを別動隊に置いて高給で囲うというのはあくまで緊急避難的な措置にしかならない。

 今日、自動車メーカーはIT企業に組み敷かれて下請け扱いされるという事態を何とか避けようと必死だが、そのためには大勢のエンジニアが知恵を持ち寄って勝てるアイデアの創出や研究開発のスピードアップを図る必要がある。

 本体のエンジニアの待遇アップがこの先の課題だ。

次ページは : ■勝負はどれだけ総利益を上げることができるか だが日本の自動車メーカーの総利益割合はあまりに薄い

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