自転車死亡事故は自転車の約8割に違反あり!! ドラレコ普及で実態が明らかに

■東京都、埼玉県では約9割が違反!

 ここまで紹介した統計は、今年3月3日に公開された警察庁交通局作製の統計「令和3年における交通事故の発生状況等について」である。(令和3年1月28日までに入手したデータにより作成)

 そして1月27日には警視庁が同様の交通事故データを発表しているのだが、まず注目すべきは自転車が関与する事故件数の推移だ。

警視庁交通総務課統計分析係作成 「自転車乗用中死亡事故の特徴」(2021年12月末)より引用
警視庁交通総務課統計分析係作成 「自転車乗用中死亡事故の特徴」(2021年12月末)より引用
警視庁交通総務課統計分析係作成 「自転車乗用中死亡事故の特徴」(2021年12月末)より引用
警視庁交通総務課統計分析係作成 「自転車乗用中死亡事故の特徴」(2021年12月末)より引用

 東京都内において自転車の関与事故件数は2016年に11,218件発生しており、以降、コロナ禍の2020年を除いて毎年増加している。そして2021年には13,332件となった。2021年に東京都内で発生した全交通事故のうち自転車が関与した事故はなんと43.6%。2016年に比較すると11.5ポイントも増えている。

 また、自転車乗車中の死亡事故についての統計を見ると、2021年には18名が死亡。そのうち、自転車側にも何らかの違反があった割合は約9割と全国平均の約8割を大きく超えている。

 違反で多いのは、交差点安全通行や信号無視となっている。「その他」が多いことも気になるが、これについて警視庁に確認したところ、「”その他”には交差点での進路変更、交差点の右左折方法、左車線からの2段階右折、携帯電話の使用や保持などの違犯が含まれている」とのことだった。

埼玉県内での自転車事故データ
埼玉県内での自転車事故データ

 上記グラフは埼玉県内の自転車乗用中の違反別死者数である。埼玉県内では2021年に34名が自転車事故で死亡している。これは交通事故死者数ワースト1の神奈川県(17名)や東京都(18名)の約2倍となる数字だ。そして、死亡した34名のなかで「違反なし」はわずか4名で、東京都同様、死亡者の88%に違反が見られる。違反の内容はやはり「その他」がもっとも多く3割強。続いて交差点安全進行、一時不停止、信号無視が続く。こちらも東京都とほぼ同様だ。

■ドラレコの普及で客観的なデータが分析可能に

 ところで、自転車側が死亡する事故における自転車側の違反はどのような方法で調べているのだろうか。

 警察関係者に聞いたところ、ひと昔前までこのような詳細なデータは公表されておらず、出始めたのはこの10年くらいのことだそう。「ドラレコや交差点のカメラなどの普及」によって、交差点内の事故がどのような状態で発生したのか等の客観的なデータが集まるようになったからだという。

 そして、事故当時の詳細や違反内容については、「事故当事者や事故当時に近くを走っていた自動車のドラレコ映像を確認したり第三者や通行人から目撃情報を得たり、交差点付近にある防犯カメラの映像を確認するなどして事故発生時の状況を判断していく」とのことであった。自転車側が死亡する事故であっても、「死人に口なし」とはならないわけだ。言い換えれば、クルマ側が一方的に悪いわけではないことを立証できる環境が整ってきたことになる。

 ただし、自転車側に何らかの違反があることが明らかになっても、自転車対自動車の事故においては、自動車側の違反は「なし」とはならない現状にも注意が必要だ。

警察庁「自転車対自動車の出会い頭事故における法令違反別自転車の死者・重傷者数」令和2年版より引用
警察庁「自転車対自動車の出会い頭事故における法令違反別自転車の死者・重傷者数」令和2年版より引用

 こちらは令和2年のデータ「自転車対自動車の出会い頭事故における法令違反別自転車の死者・重傷者数」だが、令和2年には自転車対自動車の事故は2966件発生しており、このうち、自転車側の違反なしは22%。一方、自動車側の違反なしはゼロだ。

 つまり、どんなに自転車側が交通ルール無視の酷い運転をして過失割合が高いという場合でも、対自動車の死亡・重傷事故ともなると、自動車側にも安全不確認や前方不注意の違反が取られてしまうということである。

 逆走無灯火の自転車であっても、死角から急に飛び出してくるような自転車であっても、クルマのドライバーは注意に注意を重ねて運転する必要があるということは肝に銘じておかねばならないだろう。

 警察庁では今後、死亡事故につながる悪質な違反走行の自転車に対して全国的に取り締まりを強化するとのことであり、無法自転車が減っていくことに大きな期待を寄せたい。

 一方、事故多発の電動キックボードについては新たな、規制緩和方向のルールが3月4日に閣議決定している。「特定小型原付」という新しい車種区分ができ、電動キックボードをはじめとする小型モビリティの交通ルールが定められた。乗車できるのは16歳以上。速度20キロ以下なら免許もヘルメットも不要で一部歩道通行可とのこと。ナンバープレートや自賠責保険はこれまでどおり必要だが、全体として規制緩和の方向に進むことになる。

「ナンバーや自賠責保険は必要だが免許は不要」という、これまでにない非常に珍しい乗り物が誕生することになる。閣議決定した道路交通法改正案が成立に至れば、公布から2年以内に「免許・ヘルメット不要」が実現するという段取りである。

 自転車の違法行為に対して取締りが強化されても、電動キックボードは大幅緩和とは大変残念である。ドライバーのストレスがまた増えそうである。

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