“もっといいクルマづくり”でクラウンは変わったか?
価格戦略も変わりつつある。最近のトヨタ車で目立ってきたのは、単純な原価低減ではなく、商品性に重要な部分には思い切ってコストを投じ、安売りせずにきちんとした対価を求める、という姿勢だ。
TNGA以降の車は同クラスの中では安価ではなく、高級車になればなるほどその傾向が強まる。
新しいTNGAプラットフォームは、その後カムリでDセグ用の「GA-K」、レクサス LCでラージプレミアム用の「GA-L」、クラウンでEセグメント用の「GA-N」と種類を増やしている。
1000万円オーバーのレクサスはもちろんだが、いまやクラウンも中心価格帯は500万円オーバー。同セグメントで比較すると、欧州プレミアム御三家とさして変わらないプライスとなっている。
しかし、これらハイエンドのトヨタ高級車に関しては、普及価格帯ほどTNGA効果が出ているとは言い難い。
トヨタの社内事情からすれば、これまでより大幅にコストや工数をかけて贅沢な車作りにチャレンジしているつもりでも、欧州プレミアムに乗り馴れたユーザーにとってはそれが普通。新鮮な驚きといった領域まで到達していない。
例えば、クラウンの走りは乗り心地と運動性をかなり高次元でバランスさせたとおおむね高評価だが、比較対象をメルセデス EクラスやBMW 5シリーズまで引き上げるとさすがに分が悪い。
高級車は要改善!? トヨタ車が抱える今後の課題
レクサスに関しては、高級車の基本性能ともいえる乗り心地の上質感で、現行LSのシャシー設定はかなり不満。
高級車になればなるほど期待値は高いし言い訳は許されない。ほぼ同価格帯のメルセデス S400をベンチマークとして、シャシー性能をさらに改善する必要がある。
TNGAで「いいクルマになった!」という感動は、カローラ→カムリ→クラウン→レクサスLSと、上級車になるほど薄れてゆくのが残念。このあたりが今後の課題だと思う。
現在は自動車にとって100年に一度の大変革期といわれていて、動力源は内燃機関から電気モーターへ移行し、同時に自動運転やカーシェアリングなど、車の使い方そのものもガラリと変わろうとしている。
おそらく、ここ最近のトヨタ技術者たちは、やるべき仕事が増えててんてこ舞の状態なのではないかと思う。
しかし、そういう変革期だからこそ、トヨタの基礎となっている「いま売っているクルマたち」を、もっと良くしていくことが重要。
変革期で忙しいからといって、基本をなおざりにしてはイカンと気持ちを引き締めつつ、「もっといいクルマをつくろう!」という活動に邁進していただきたいものだ。
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