■欧州のワゴン人気は走りの良さが要因
欧州も、北米ほどではないが自動車社会で、複数台所有は一般的だったが、それでもステーションワゴン人気が高かったのは、走りの良さが原因だ。
ドイツ・アウトバーンは速度無制限。イタリア、フランス、スペインなど近隣諸国には速度制限があったが、取り締まりはないに等しく、欧州大陸の高速道路は、事実上ほぼ速度無制限だった。
超高速域では、重心が高くて車重が重くて空気抵抗も大きいSUVは圧倒的に不利で、セダンやステーションワゴンに対抗できない。だからこそ、実用性と高速性を兼ね備えたステーションワゴンが人気を集めたのだ。
北米でスタートしたレクサスは、まず高級車の本丸たるセダンから参入し、続いてRX(日本名ハリアー)でSUVに進出。大成功を収めた。
■レクサスは欧州で当初大苦戦……最初に成功したのはSUVだった
実はレクサスは、誕生の翌年、1990年から、欧州でも販売が始まっている。しかし欧州では欧州製高級車ブランドの壁はあまりにも厚く、長年まったく売れなかった。
北米では大成功した初代LSも、欧州ではドイツ御三家の前にまるっきり歯が立たず、壊滅的に売れなかった。欧州に建設された立派なレクサス店の店舗は、「採算を取るのに1万年かかる」と言われたほどだ。
欧州が最初に認めたレクサスは、SUVのRXだった。「レクサスも、SUVならまあまあだね」みたいな形である。認められたといっても、現在でも欧州におけるレスサスのシェアは微々たるもので、メルセデスの10分の1程度にとどまっている。
繰り返すが、レクサスが誕生したのは1989年で、当時北米ではステーションワゴンはそれほど人気がなく、90年代に入ると、レクサスRXの大ヒットもあって、クロスオーバーSUV全盛期に突入する。
レクサスブランドはクロスオーバーSUVの「元祖」。その後次々にモデルラインナップを強化し、順調にシェア拡大して行った。今やレクサスの販売台数の大半がSUVである。
■レクサスにワゴンがないのはタイミングのせい!?
そういった経緯を考えると、レクサスがステーションワゴンに進出しなかった理由は、「出す理由がなかったから」と言うことになる。
もちろん、レクサスのステーションワゴンを望む声がゼロだったわけではない。特に日本では、ドイツ製ステーションワゴンの人気が高く、レクサスのステーションワゴンが欲しいという声は、それなりに存在した(過去形)。
しかし、レクサスの本丸はあくまで北米、そして中国だ。昨年の地域別の販売台数は、このようになっている。
北米 約33.2万台
中国 約22.7万台
欧州 約7.2万台
日本 約5.1万台
中近東 約2.8万台
東アジア 約3.0万台
北米や中国では、ステーションワゴンは消滅状態に近い。今や欧州でも、ステーションワゴンが売れているのはドイツ車だけ。その他のブランドはどんどん撤退している。日本車も同様だ。
レクサスは、ステーションワゴンに進出するタイミングを逃しているうちに、いつのまにかステーションワゴン市場自体がなくなった、ということだろう。
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