■円安で自動車輸出に恩恵。ただし為替依存は危険
それで自動車メーカーが儲かるなら、日本経済にはプラスということで、円安の痛みに対するささやかな慰めになるというものだが、実はその点についても問題がある。日本車メーカーのなかで、商品そのもので利益を出せているのはトヨタとスズキの2社くらいで、その他は売上高に対する営業利益があまりにも少なすぎる。
それでもわずか1カ月の間に、10円以上も円安に振れるという為替レートはトヨタにとっては利益のさらなる拡大に、苦しい他社にとっても干天の慈雨になるだろうが、円安効果の好業績を喜んでいる場合ではない。
思えば、2008年のリーマンショック直後、輸出比率の高いマツダが「1ドル=70円台でも輸出で利益が出るように」と当時の山内孝社長が悲壮な決意を語ったように、すべてのメーカーが超円高でも耐えられるような経営体質の構築を表明していた。
ところが、それから十数年が経過した今、1ドル=110円でも苦しいというメーカーのオンパレードだ。超円高が緩んだことで経営改革のスピードが鈍った格好だが、今のままだと円安なくしては業績が成り立たない「円安ジャンキー」の業界になってしまいそうである。
■このままだと日本は「マイカーは高嶺の花」時代に後退する
この円安が定着、あるいはさらに進行するような事態になれば、儲けの少ない日本市場ではサービス価格でクルマを売り続けるという動機も失われ、食パンや小麦粉のように日本メーカーはこぞって国内販売価格を大幅に上げてくることになるだろう。
すでにクルマの販売現場においてはフルローンに比べて月々の支払額を低く抑えられる残価設定ローンが一般的になっているが、クルマの価格が一層上がればそれだけではすまず、リースやサブスクリプションでしかクルマに乗れない人の割合が増える公算が大だ。
この先果たして国産車メーカーが奮起してコスト低減を成し遂げるのか、あるいは手っ取り早く輸出で儲ければ、国内価格は「円安還元セール」で維持したままでいいと考えるのか。日本の自動車ユーザーの命運は急激な為替変動にも左右するだけに、止まる気配がない円安基調がいつまで続くのか、マイカー族にとってもガソリン価格の高止まりとともに目を離すことができない。
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