■メーカー完成車隆盛の裏事情
さて裏事情を言えば、メーカー完成車には、もう1つ大きな狙いが隠されている。トラック販売の適正化である。
これまでのトラック販売は、ディーラーの営業担当、架装メーカーの営業担当、あるいはユーザーの購入担当の間で、恣意的にビジネスが進められるケースが多々あり、コンプライアンスの面からもこれらダークな商取引の慣習を払拭する必要があった。
メーカー完成車は、いわゆる「カタログ販売」ができることが1つのセールスポイントになっているが、それは、どの地域、どの営業担当が販売しても全国一律の価格を提示できることを意味している。メーカー完成車は、トラック販売の適正化の期待も担っているのだ。
というと、メーカー完成車はいいことだらけのように思えるが、本当にそうか?「ボディまで4社横並びでいいのか?」という疑問も当然あると思うが、そもそもメーカー完成車の中核をなすドライウイング自体、規格化・画一化を指向する上物なので、その中で差別化を図っていくのはなかなかむずかしい面があるだろう。
さらに、メーカー完成車のボリュームがこれほど大きくなったことで、架装メーカーに地殻変動的な大きな影響が及んでいることにも留意したいと思う。
メーカー完成車を手がける大手架装メーカーは置くとしても、それ以外の「つくりボディ」を生業としている架装メーカーへの影響は必至で、今日のトラック業界・架装業界の混乱が収束すれば、架装メーカーとしてのこれからの生き方を真剣に模索しなければならない日が来ることは間違いないだろう。
いずれにしてもメーカー完成車は、単車主体で、日本固有の上物であるウイングボディの普及と軌を一にする、日本独自のトラックビジネスとして要注目の存在なのである。
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