■他の自動車メーカーによる急速充電器の設置状況は?
日本の都市部では集合住宅に住む人が多く、新しくBEVを買っても自宅で夜クルマをとめているうちに充電できない人も多い。そんな人にとっては、クルマを買った近所のディーラーで急速充電するのが、便利かつ気兼ねがない。
そこでトヨタ以外のディーラーに急速充電器がどの程度設置されているのか、日本における急速充電で実質的に標準規格となっているCHAdeMO(チャデモ)の充電施設位置情報ファイル(2022年4月更新)をもとに調べてみた。
まず、日本全体では、急速充電器が設置されているのは7232カ所、台数は7503基。うち日産ディーラーとわかる名称で急速充電器がある施設として登録されているのが1769店舗、急速充電器数1769基(日産レンタカー除く)となっている。ホンダは、ウエルカムプラザ青山や寄居工場も含め9カ所、9基。三菱自動車は、岡崎工場や本社ショールームなど含め、188カ所、190基だった。
国産メーカーでは、日産ディーラーにおける設置数が圧倒的に多いという結果になった。三菱自動車も比較的健闘しているといえるかもしれない。
これらの急速充電器は、日産ディーラーに設置されていたとしても、NCSなどその急速充電器用の課金サービスに加入してさえいれば、別のメーカーのクルマでも使うことができる。
ちなみにテスラの場合は、テスラが設置したスーパーチャージャーはテスラ車しか使えない。そのためCHAdeMOの充電施設位置情報ファイルにはテスラのスーパーチャージャーは登録されていない。2022年4月現在、テスラのHPに掲載されている情報によると、スーパーチャージャーの設置拠点数は47、設置数は216基だった。
テスラの場合は、1拠点あたりのスーパーチャージャーの設置数の平均は約4.6基。さらに最高で250kWで充電できる。
拠点数の少なさを充電器の性能と基数でカバーしていると言えるだろう。国産車のディーラーに設置されている急速充電器は、1カ所あたりほぼ1基のみで、先客が充電していたら充電完了まで待つことを余儀なくされる上、充電性能も44kWが多い。
いつ行っても待たされず、サクッと充電できるのもBEVの性能の一部、と考える人にとっては、国産車のディーラーでの急速充電はまだまだフラストレーションが溜まるだろう。
今後設置されるトヨタの急速充電器については、前田CTOいわく「短期的には販売店の利便性やコスト負担能力を考えると既存の充電器を使うことになるため、50〜90kW程度の充電性能となるが、中長期的にはトヨタ自身による急速充電器の開発を手がけていく必要性があると認識しており、90kWもしくはそれ以上の性能を持つものを開発するのは当然。
今後トヨタのBEVの普及が進むなかで、データを蓄積し顧客にとって何がベストなのかを検討する」とのことだった。トヨタが自前で急速充電器を開発すれば、かなりのものができるのは間違いない。
また、トヨタディーラーが急速充電ネットワークに大挙して参加することで、充電の課金が急速充電器設置者に充電時間ベースで配分され、より高出力にしたところで急速充電器設置者により多くのおカネが入るわけではないという現在の課金ネットワークの問題にも声を上げてくれれば、より良いBEV環境が整っていく。
いい意味で政治力があるトヨタには、筋の通ったことを大きな声で言ってくれることを望みたい。
コメント
コメントの使い方トヨタはEV充電インフラを進めるだけでなく、既存EV充電器も他社車両の利用をしやすくすべきだ。現状は営業時間内でかつEV充電に関係ない車をEVスペースに止めている。非常に利用しづらい。