■充電器設置数が増えるとガソリンスタンドがますます少なくなる?
ハイブリッドをはじめとする電動車の登場や、ユーザーの環境意識の高まりなどもあり、クルマの燃費が著しく改善され、またコロナの影響による物流の混乱や旅行の減少などもあり、直近ガソリンの消費量は大きく減ってきている。
それに加え、高度成長期以降のモータリゼーションの拡大とともに増えたガソリンスタンドの数も、ここ10年で次々と設備の更新時期を迎えて費用負担が大きくなっていることや後継者不足、収益性の悪化もあり、ピークの半分以下まで減り続けている。
BEVの保有台数や急速充電設備が増えることで、ガソリンスタンドの数はさらに急激に減っていってしまうのだろうか。
結論からいうと、因果関係が逆だと思われる。高齢化・過疎化の続く地方部を中心に、採算の悪いガソリンスタンドを、地域のインフラだからと言って歯を食いしばって維持してきたが、そのコストは年々上がり続けるのに比べ、BEVの保有コストが大幅に下がりつつあるので、クルマが生活必需品である地方部を中心に、ガソリンスタンドに依存するよりも家で充電できるBEV、特に比較的安価な軽BEVに乗り換える動きが加速すると考える。
ただし、国内の乗用車保有台数は約6200万台、国内での新車販売台数は年間約400万台。今いきなり新車販売が100%BEV化されたとしても、全てのクルマがBEVに置き換わるには15年ほどかかる。
そして全ての新車販売がBEVになるには、相当の時間がかかる。それまではガソリンスタンドは間違いなく必要だが、採算性の悪い地域ではどんどん数が少なくなっていくのは間違いない。
資源エネルギー庁によると、令和3年度末現在、ガソリンスタンドが全くないのは10町村。1ヶ所しかないのは86町村、2ヶ所が109市町村、3ヶ所が138市町村となっている。また最寄りのガソリンスタンドまで15km以上離れたところに人が住んでいる市町村も302あるという。
資源エネルギー庁の「SS (サービスステーション)過疎地対策ハンドブック」では、SS過疎地でこれ以上ガソリンスタンドをなくさないようにする手段として、地域に求められるサービスをガソリンスタンドが一括して担う「総合生活サービス拠点化」や、地元住民や自治体がガソリンスタンドを買い取って共同運営したり、資金や人を拠出する体制構築、複数のガソリンスタンドの統合・集約や移転などのビジネスモデルの大胆な見直しなどが先進事例として挙げられている。
だが日本の地方部での高齢化・過疎化の進行、クルマの低燃費化の流れを止めるのは現実的ではなく、これらの「先進的」アプローチも、正直言って目先の時間稼ぎにしかすぎない。
国の補助金を考慮すると200万円程度で買うことのできる低価格の軽EVが、近々日産と三菱自動車から発売される。
2050年までのカーボンニュートラル実現を国としての公約としていることを考えると、安価な軽EVの発売をきっかけに、クルマがないと生活できない地域で無理やりガソリンスタンドを存続させるだけでなく、どこの家にも供給されている電気で走るBEVの普及促進による地方部でのモビリティの確保の方向に本格的に政策の舵を切ってもいいタイミングなのではなかろうか。
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コメント
コメントの使い方トヨタはEV充電インフラを進めるだけでなく、既存EV充電器も他社車両の利用をしやすくすべきだ。現状は営業時間内でかつEV充電に関係ない車をEVスペースに止めている。非常に利用しづらい。