業者オークションに6台のランクル300が出品 「転売しません」の誓約書はもはや効力なし? 

■現金で買ってもディーラーに所有権をつけるとどんな効果があるのか

新車価格は510万円~800万円のランドクルーザー300。中古車市場での取引価格は約2倍から3倍だ
新車価格は510万円~800万円のランドクルーザー300。中古車市場での取引価格は約2倍から3倍だ

 筆者の手元にある誓約書には「販売ルール」として以下のように書かれている。「ランドクルーザー300は登録日から最低1年以上所有権をディーラーにすることが前提となります」

 例外となるのは、自社ユーザー客で輸出及び転売の恐れがない購入者で理由書(誓約書不要届)を提出し、ディーラー側で審査を行い誓約書なしでも販売できると判断した顧客だ。

 この時の審査で判定不可となった場合は誓約書(所有者名義をディーラーにする)を提出することになる。

「転売目的ではないのか?」という受注時に内容を精査することも水面下で行われている。

 注文時に誓約書やその関係書類に記載された項目でディーラーが怪しいと判断した場合、注文を受けても裏で保留されている可能性があるという。注文自体は受けてもらえても、納車の順番がかなり後回しになるということだ。

 誓約書を提出させる理由はこのように記されている。

「外為法に抵触するリスク、輸出先によってはグローバルでの安全を脅かす大きな問題につながる恐れがあるため」

 簡単に言えば紛争地域で「武器」として使用される(外為法違反)ことや、トヨタ車を販売していない地域で何らかのトラブルが発生した場合の製造物責任に関することが主な理由だ。

 なお、注文時に転売をしない誓約書を書かされているケースはこれまで人気車や限定車、プレミア価値が付きそうなクルマの場合にはこれまでもランクルに限らずあった。

 しかし、ランクル300がこれまでのケースと違うのは、誓約書にプラスして「現金一括で購入してもディーラーに所有権を1年間は付ける」という驚きの誓約をさせられることである。

 トヨタ自動車としては「あくまでもお客様に協力いただく」というスタンスのようだが、とあるトヨタ販売店から出された購入時の書類では、「転売しませんの誓約書+ディーラーに所有権」がほぼ強制的にセットになっていた。

 トヨタ自動車もこの件は分かっているとのことだが、「現金一括購入でも1年間は所有者名義をディーラーにする」というのは全国の販売店の数か所という認識のようである。

 ディーラーに所有権をつけるとはどういうことなのか? なぜ、ディーラーに所有権があると転売防止が可能になるのか?

 実際、「転売しません」という誓約書だけでは法的拘束力はない。トヨタ販売店との関係は多少、雰囲気が悪くなるだろうし、もしかすると誓約書にあるように、一生、トヨタからクルマが買えなくなる可能性もゼロではない。

 一方、ディーラーに所有権があるのなら、それはもう物理的に転売が不可能な状況となる。

 転売とは具体的に言えば、所有者が変わることになるがその手続き(移転登録 俗にいう名義変更)には旧所有者(ディーラー)に印鑑証明をはじめとした所有権解除のための必須書類をもらう必要がある。

 当然だが、中古車販売店や買い取り業者などからディーラーに連絡が行けばディーラーが転売を知ることになる。転売厳禁としているディーラーが名義変更のための書類を出すわけもないだろう。

 売買の動きを知ることができ、事前に転売を阻止する… ディーラーが所有者となればそれらもすべて把握できるのだ。

■転売されたランクル300の行き先を調べてみた!

 では転売されたランクル300はどこに行くのか。今年に入って業者オークションに出品された3台のランクル300の行き先を調べてみた。

■その1:新規登録時は所有者がディーラー、使用者が個人。業者オークションに出品されたが結果は流札(売買が成立しない)。その後、新規登録から7か月後に中古車販売店の所有になり、現在は所有者が信販会社、使用者が個人となっている。

■その2:新規登録時は所有者、使用者共に個人。納車から約1か月後に業者オークション出品したが流札。日本にいる外国の中古車販売業者が所有者となり「一時抹消登録」と同日に「輸出予定届出」が行われており、5月下旬までに「輸出予定」となっている。(すでに輸出された可能性もある。輸出が完了すると税関から運輸支局に連絡があるが入手した現在記録には記載がなかった)

■その3:新規登録時は所有者使用者ともに個人。納車から2週間後に業者オークションに出品。落札されて海外輸出専門業者の所有となり、3月末にすでに海外へ輸出された。

 ということで、転売された他のランクル300と合わせて計6台の行方を調べたところ、輸出が3台、国内販売が3台という結果となっている。

 ただし、国内販売であってもディーラーの所有から離れたあとは、もうどこまで行くのか全くわからない。海外に輸出される可能性も十分にある。

 ちなみに筆者が気になるのは1のケースだ。このランクルは新規登録が2021年8月下旬に行われている。ランクル300の発売日は8月2日なので受注開始直後から予約をしていたのだろう。

 最初に買ったのは個人投資家で恐らくは現金で購入しているだろうが、所有者欄にはトヨタ販売店の名前があった。ん? これが、「現金一括購入でも所有者をディーラーに」ということなのか。

 しかし、その後、車両は中古車販売店の名義に移っている。何らかの理由でディーラーが中古車販売店への転売を認めて書類を出したことになるが、ディーラーによっては転売禁止期間を1年ではなく半年としているところもある。

 であれば8月下旬に新規登録されたこのランクル300も誓約通り半年を経過したところで売却したのかもしれない。

 さて、ランクル300といえば長納期も話題だ。現在注文した場合に納車までに4年以上かかる。昨年6月に注文した方は「納期は2022年10月~2023年10月と言われています」とのこと。予定納期に1年もの幅があるとは驚きだ。

 なお、転売されていく先は国内中古車市場にも数多く流されており、大手中古車雑誌にはこの原稿を書いている5月半ばの時点で8台のランドクルーザー300が掲載されている。下は1600万円台からで最高額は走行距離5キロでなんと3000万円!

 長納期が続く以上、今後もランドクルーザー300の高値転売は続いていくのだろう。早期に納車された個体で転売不可が半年であれば、誓約期間を破ることなく転売も認められるのだろう。

 国内で取引されている分ならまだ良いが、メーカーがもっとも嫌がるのは海外への流出だ。海外バイヤーも国内で販売される300を虎視眈々と狙っている。

 ランクル300転売狂騒曲はいつ終わりを告げるのだろうか?

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