クルマの自動化の波は止まらない! しかし、加齢により感覚や反応が低下し始めたドライバーにとっては、最新の自動化機能が必ずしも使いやすいとは限らない。そこで今回は、身体能力の衰えを感じたら知っておきたいクルマ選びのポイントを紹介する。
文/藤原鉄二、写真/写真AC
【画像ギャラリー】先進のテクノロジーは万能じゃない!(11枚)画像ギャラリー「なんでもオート」は、脳を衰えさせる!?
運転中のシフトを入れるときの手応え、ハンドルを切るときの抵抗感、ブレーキを踏むタイミングや強さ……。こうしたアナログな操作は、本来ならドライバーの五感と脳を総動員して行う「複雑なマルチタスク」であり、脳トレにもなる。
しかし、近年のクルマは何でも「オート化」。便利で安全性が高まるいっぽうで、自分で操作する場面が減り、自分の意思で操作するアナログ的な感覚が薄れつつある。
「五感を使った能動的な行為」は認知機能の維持に役立つことがわかっている。逆に、自動化によって受け身の行動が増えると、脳への刺激が乏しくなり、判断力や注意力の低下を招きやすくなるという報告もある。
「なんでもオート」はたしかに便利だ。だが、頼り切りでは脳は衰えるいっぽう。自ら判断し、操作し、反応する——そんな「脳を使う運転」こそが、安全に、長く運転を続けるためのカギになるといえるのだ。
スイッチは「押す」「ひねる」が安心につながる
最近のクルマはタッチパネル化が進んでいる。エアコンもオーディオも、タッチ操作でスマートに……というのがメーカーの狙いだ。
しかし、加齢に伴い脳の機能が少しずつ衰え始めると、この便利であるはずの機能がかえって扱いづらく感じられることが少なくない。
例えば、エアコンの温度調整。昔ながらのダイヤル式のものなら、手元を見なくても「カチカチ」とした手応えで操作できる。
しかし、フラットなタッチパネルでは、どこに触れているかわからず、運転中につい視線を画面に向けてしまう。これは「ながら運転」の原因にもなりかねない。
若いうちは複数の作業を同時にこなすマルチタスク能力が高いが、加齢とともにこの能力は衰えていく。その結果、タッチパネルの操作に気を取られて他の操作がおろそかになりやすく、とっさの危険回避やアクセルとブレーキの踏み間違いのリスクも高まるのだ。
そのため、クルマを選ぶ際には、エアコンやオーディオなどのような頻繁に操作する装備に関しては物理的なボタンやダイヤルで操作できるモデルを選ぶと安心感は高まる。
スライドドアやリアゲートはあえて手動式にするのもアリ
オートのスライドドアやリアゲートは、高齢者にやさしい装備のように思われがちだ。
しかし、「想定外の動き」や「操作とのタイムラグ」が生じ、かえって危険な状況を招くことがある。
閉まりかけている最中に人や物が接触しても反応が鈍く、すぐに止まらないこともある。最悪の場合、体を挟んでしまうような事故が起こる可能性もある。特に、俊敏性が低下した高齢者はこうした事故のリスクが高くなる。
ミニバンなどの場合、スライドドアやリアゲートの開閉は、手動式だと重く、加齢によって体力が落ちた人には負担になることもある。しかし、安全面を重視するのであれば、あえて手動式、もしくは手動と電動の切り替え機能が備わったモデルを選ぶというのもひとつの考え方だ。
コメント
コメントの使い方ある程度はアナログも残しておくものだよ。
誰かが言っていた「納豆は今はパックだし、醤油も袋ではなくパックをパキッと折るタイプ。こういう簡単になっていくことで今まで出来ていたことが出来なくなり、不器用人が増えていく。昔は藁に入っていてそこから取り出していた。」と。極端な例かもしれないが、そういうことであると思う。