ボディブローのように響く円安が元凶? ウクライナ情勢と物価高騰への政府緊急経済対策、クルマ界への影響はどうか?

■トリガー条項発動の声も出ていたが……

2011年の東日本大震災後に出されたトリガー条項の発令を願うガソリンスタンドは少ないのが実情だが……(beeboys@AdobeStock)
2011年の東日本大震災後に出されたトリガー条項の発令を願うガソリンスタンドは少ないのが実情だが……(beeboys@AdobeStock)

 石油元売り各社に補助金を出すことについては当初、「補助金が具体的にどのように使われるかもわからない。石油元売りの利益に回り、価格引き下げ効果が出ないのではないか」という批判も噴出。

 ガソリン税を一時的に約25円引き下げる「トリガー条項」の発動を求める声も多く出ていたが、凍結解除による減収分を上回る財政支出でどうにか価格を維持している。

 販売価格の引き下げ額の透明性が高いという点では、トリガー条項は非常にわかりやすい方法で、東日本大震災以来凍結されていたこの制度を復活させてほしいという声は燃料を販売するガソリンスタンド側でも少ない。

 しかし、今のガソリン高はトリガー条項が制定された2010年時点の想定を完全に超えている。トリガー条項だと税額が比較的低かった軽油の価格引き下げ効果が充分でなく、物流コストは大幅に跳ね上がる可能性もあり、結果的には補助金方式はそれほど悪い策ではなかったとの見方もあるようだ。

■2008年にはレギュラー180円台半ばに

 それにしてもなぜガソリン価格は実質200円超まで上がってしまったのか。ウクライナ情勢の緊迫による原油価格の高騰は一大要因だが、過去にはもっと価格が高かったこともある。

 それが一時、147ドル/バレルという史上最高値を付けた2008年で、リーマンショック直前のことである。だが、その時でさえレギュラーガソリン1リットルあたりの平均価格は180円台半ばだった。

 200円/リットル超えのうち、一部は国民が危惧していたように不透明な補助金方式の弊害で石油元売り各社の利益確保に回ったという部分はあるが、原油価格高騰による販売減少の損失を石油元売り各社がモロ被りしなければならないというのも少々酷な話だ。

 実際、2008年のガソリン高騰の時には思い切った対応策が取られなかったこともあって、石油元売りや燃料販売業者は大きな損失を被った。

「原油高騰のコストを価格に適正に転嫁できていれば、リーマンショック前もガソリン価格はもっと高くなっていた」(石油元売り関係者)

■元凶はロシアのウクライナ侵攻後の急速な円安にある!?

ロシアによるウクライナ侵攻は終わりがまだまだ見えてこないが……それよりももうひとつの元凶である円安も問題だ(burnstuff@AdobeStock)
ロシアによるウクライナ侵攻は終わりがまだまだ見えてこないが……それよりももうひとつの元凶である円安も問題だ(burnstuff@AdobeStock)

 1バレル=110ドルでリッター200円超えを招いた元凶は、実はウクライナ危機を引き金に起こったもうひとつのクライシス、急速な円安である。リーマンショック直前の為替レートは1ドル=100円台。それに対して現在は1ドル=130円前後。

 ドルベース価格でみれば原油価格は史上最高値よりは安いが、円ベースでウクライナ侵攻以降の3ヵ月平均をみれば、原油価格はまぎれもなく史上最高値なのである。

 補助金政策で全国平均170円程度に抑え込まれているガソリン価格。この水準ならまだ自動車ユーザーは何とか出費に耐えられるが、政府としても1ヵ月あたり数千億円もの支出になる補助金をいつまでも出し続けるわけにはいかない。

 支持率は安定している岸田内閣だが、その政権運営をみると基本的に「場当たり」、「選挙対策」の色彩が濃い。補助金を出すのは夏の参院選後の9月頃がリミットになるという見方が業界でも有力だ。

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