まずはトップの写真をじーっくりご覧いただきたい(特に下のほう)。前方にまるでムカデの足のようなパーツが無数に取り付けられたコレは、いったいなんなのだろうか?
答えは、NEXCO東日本が国内で初めて導入した移動式防護柵「ロードジッパーシステム」用の専用車両、BTM(Barrier Transfer Machine)。その名のとおり、道にジッパーをしてしまうマシンなのだ。
※本稿は2018年1月のものです
文・写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2018年2月26日号
■NEXCO東日本が国内で初めて導入
ロードジッパーシステムは、欧米ではすでに実績のあるLINDSAY社の開発したもので、1つ約680kgもの重量があるコンクリート製防護柵(高さ810×幅460×延長1000mm)をS字レールで浮かせ、BTMが進むのにつれ防護柵が車両の反対側へ移動してゆく、というコンベア式のシステムを採用している。
そもそもNEXCO東日本では、従来人力でコーンを1個ずつ配置し車線規制を行っていた。しかしこの方法では、時間帯によって規制する車線数を変更させる場合にも、その都度コーンを配置し直す必要がある。
時間がかかるうえに、コーンの合間から車両が入ってきた場合に作業員の安全確保の面で難があった。
そこで白羽の矢が立ったのが、今回取り上げたロードジッパーシステムである。ロードジッパーならば、非常に短時間で規制車線が変更でき、道路の混雑状況に合わせて工事車線を自由自在に規制することが可能になる。
何より、コンクリート製防護柵でガードされたなかでの工事施工が実施できるのだ。
また、作業員の安全確保の面だけでなく、誤って規制車線に入ったドライバーが加害者になってしまうことも防いでくれる効果は大きいのだという。NEXCO東日本管内での工事区間への車両の誤進入はここ最近、年平均で33件起きていたというが、ロードジッパーシステム導入で大幅に減少しそうだ。
■すでにいくつもの現場で活躍中!
ロードジッパーのBTMは、全長20mのレールに片側54個ある計108個のローラーが防護柵を挟んで持ち上げて移動。
防護柵同士はピンによって連結され、一定間隔で鋼製の伸縮可能部分(エクステンション)を連結し、端の開口部には緩衝用防護柵を設置。防護柵の移動幅自体は約3〜約5.5mで、BTMの走行速度は作業時には約10km/h、回収時で約30km/hというものだ。
BTMのキャビンは前後に設置され、前後どちらにも進行できる。つまり、変更した規制車線数を元に戻す場合には逆方向に進むだけで対応できるようになっている。
前後の運転席では各々独立したステアリング舵角を与えることができるため、BTMを道路上で斜めに向けて進めば1車線以上の防護柵移動も可能。さらに前後で車高を変えることもでき、段差への対応も万端だ。
ちなみにこのBTMだが、現在の道交法では「自動車」に該当しないため、運転免許での区分もなく、ナンバーも取得されていない。
NEXCO東日本では、2016年4月から7月まで常磐道での初石BOX剥落対策工事での工事車線規制で初めてロードジッパーシステムの実証実験を実施。その後も同年11月から昨年3月まで、東京外環道大泉JCT〜和光IC間でのベルトコンベア設置で導入していた。
さらに今年1月からは、関越道前橋IC上り線出口の減速車線延伸の工事車線規制にも活用されている。
NEXCO東日本は昨年、ロードジッパーをほかの高速道路会社に販売する販売会社「NEXCO東日本イノベーション&コミュニケーションズ」を設立。すでに他社での採用も決まっているとのこと。
一見、異形なロードジッパーだが、今後もますます活躍の場を拡げていきそうだ。
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